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中国世論戦「沖縄も日本の領土ではない」 メディアと愛国心をフル活用

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中国世論戦「沖縄も日本の領土ではない」 メディアと愛国心をフル活用

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 【国際情勢分析】

 終戦の日の8月15日、中国共産党機関紙の人民日報が、「尖閣諸島(沖縄県石垣市)だけではなく沖縄も日本の領土ではない」とする論評記事を掲載した。人民日報は5月にも「沖縄の帰属は未解決の問題」と主張する論文を掲載したばかりで、さらに表現を踏み込んだ。日本の主権を標的にした継続的な発信は、東シナ海の覇権を目指す中国による世論戦の一環といえそうだ。

 「個人の資格で執筆」

 記事は「国際条約上、釣魚島(尖閣諸島の中国側名称)の主権は中国に帰属する」と題し、中国社会科学院の研究員が執筆。ポツダム宣言により確定した日本の領土について、「尖閣諸島が含まれていないだけでなく、沖縄ですら領土ではない」と主張している。

 この記事は、タイトルが「釣魚島のみならず沖縄も日本の領土ではない」に差し替わり、中国内のニュースサイトや中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」で瞬く間に拡散した。

 沖縄の帰属に言及した人民日報の5月の論文をめぐっては、菅義偉(すが・よしひで)官房長官(64)が「全く不見識な見解」と抗議したものの、中国側は「研究者が個人の資格で執筆した」と、どこ吹く風だった。

 中国は軍事戦略上の海上ラインとして、沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」内の制海権を2010年までに握る計画だったとされる。沖縄の日本帰属を明確に否定した今回の記事は、そうした中国の野心を改めて見せつけた格好だ。

 この世論戦は少なくとも中国国内では一定の成果を上げている。5月下旬、中国のエリートが集う北京大学で、沖縄の帰属をテーマにした講演会が開かれた。

 講演者は台湾中央研究院近代史研究所の林泉忠(りん・せんちゅう)・副研究員。林氏は基本的に、沖縄の日本帰属の正当性を否定する論調には反対の立場だ。しかし、会場で行われた挙手アンケートでは、「琉球(沖縄)の独立運動を中国は支持すべきか」との問いに、回答者の7割近くが「支持すべきだ」と回答した。

 「中国が今より強大になってアメリカを押さえつけられるようになってから、沖縄を中国の自治区にすればいい」

 「沖縄を台湾のような存在にして、日本の発展の力をそぐべきだ」

 参加した大学生からは、沖縄の民意を完全に無視した意見が続出。一方で、「沖縄の帰属について議論すれば、中国もチベットやウイグルの帰属問題について、日本からたたかれる」と警戒する声も上がった。

 官製メディアうのみ

 中国では、メディアに情報統制が敷かれていることは一般市民も周知の事実で、国内の報道機関に対する信頼感は低い。ところが日本の民間非営利団体「言論NPO」と中国英字紙チャイナ・デーリーが今年6~7月に実施した共同世論調査で、興味深い結果が出た。

 「自国メディアは両国関係にとって客観的で公平な報道をしていると思うか」との質問に、「そう思う」と答えた日本人の割合は25.4%だったのに対し、中国では84.5%に達したのだ。ナショナリズムを刺激する話題では、“盲目的”に官製メディア情報をうのみにしてしまう中国社会の危うさが浮かび上がる。

 なお調査では、日本、中国ともに相手国に「良くない印象を持っている」と答えた人の割合が、2005年の調査開始以来、初めてどちらも9割を超えた。日本の対中感情の悪化は、昨年9月の反日暴動や、中国公船の尖閣周辺へのたび重なる領海侵入などが大きく影響しているとみられるが、中国では尖閣国有化に端を発したメディアの日本だたきが影を落としているのは間違いない。

 メディアと愛国心をフル活用した中国の世論戦は、今後も続きそうだ。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS

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