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「復興五輪」の名が泣く汚染水対策

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「復興五輪」の名が泣く汚染水対策

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 【安倍政権考】

 この夏、わが世の春を謳歌(おうか)する自民党の各派閥は、泊まりがけの研修会を復活させるなど忙しかったようだ。最大規模を誇る「総裁派閥」の町村派(清和政策研究会)もほかではない。9月1、2日に長野県軽井沢町で5年ぶりの研修会を開き、会長の町村信孝元官房長官(68)は「大勢の人が参加して研修会を開くことは喜びだ」と、満面の笑みをたたえた。

 「1強」での緩み象徴

 懇親会では約70人の参加者全員による「第1回清和政策研究会じゃんけん大会」が開かれた。頂点に立った中堅衆院議員はフェイスブックに「図らずも初優勝してしまいました! じゃんけんメッチャ強いです」と無邪気に書き込んだ。

 しかしAKB48でもあるまいし、のんきにじゃんけんをやっている場合なのか。

 東京電力福島第1原発の放射性汚染水問題が日ごとに剣呑(けんのん)化するなか、町村氏は研修会での記者会見で、2020年夏季五輪東京招致に対する汚染水問題の影響を問われ、こう答えたのだった。

 「(汚染水問題に関して)あまり詳しく勉強していないわけで、何が本当の問題なのか勉強しないといけないと思う。東電が悪いのか、政府が悪いのか。軽々と言うほど私は勉強していないので…」

 最大派閥の領袖(りょうしゅう)としては悠長なものである。忙しいはずのセンセイ方が避暑地に大挙し、じゃんけんをやっている暇があるのなら、汚染水問題をめぐる「勉強会」を開くべきだっただろう。

 一方、安倍晋三首相(58)はといえば8月19日、東電が汚染水問題で記者会見をしていた最中にゴルフ場でクラブを振りまくっていた。その後は中東諸国を歴訪し、原発セールスにいそしんだ。

 石原伸晃(のぶてる)環境相(56)は9月2日、ホラー映画「貞子3D2」の主役、貞子を大臣室に招き、大はしゃぎする始末だ。

 国会は国会で国家の危機管理への真剣味が感じられない。野党側が汚染水問題をテーマに関係閣僚が出席する衆院経済産業委員会の閉会中審査を要求したが、与党側の主張で審議は先送りされた。

 7年後の「東京五輪」の成否が決まるブエノスアイレスでの国際オリンピック委員会(IOC)総会が、いよいよ7日夕(日本時間8日早朝)に迫る中、政府・与党に「国内で無理に騒がないほうがいい。今はくさい物には蓋(ふた)だ」(自民党幹部)という判断があったからだ。

 これこそ「自民党1強時代」で浮かれる安倍政権の“緩み”を象徴しているとしか言いようがない。

 国際社会が日本の汚染水問題の行方を注視するなか、そもそも自己完結など望むべくもない東電に対応を丸投げしてきた政府はようやく3日、福島第1原発施設への地下水の流入を防ぐ「凍土遮水壁」設置など汚染水対策に470億円の国費を投入する方針を決めた。IOC総会を目前に控えたタイミングでの駆け込みの弥縫(びほう)的措置であることは言うまでもない。苦肉の急場しのぎの対策で、海外諸国の懸念は払拭できまい。うたい文句とする「復興五輪」の名が泣くばかりだ。

 「政府が前面に出て完全に解決する。(五輪開催の)20年には全く問題がないことをよく説明する」。安倍首相は4日、20カ国・地域(G20)首脳会合が開かれるロシア・サンクトペテルブルクに出発前、汚染水問題について“安全宣言”を表明したが、国際社会の目はなお厳しい。

 ゆえに7日のIOC総会で「TOKYO」コールを聞けるのか、情勢は混沌(こんとん)としている。筆者は「東京五輪」を待ち望む1人だが、「汚染水より五輪ありき」がにじむ安倍政権の姿勢とは相いれない。

 「(東京に)五輪が決まって喜べるのか?世界中に胸を張って言えるのか?自分なら恥ずかしくて言えない。『残念だが汚染水対策に全力を注ぐので辞退する』と言ってくれた方が国民として誇りが高い」。ある若者はネットにそう書いたが、決して的外れではないだろう。

 決戦の舞台、ブエノスアイレスにおっとり刀で駆けつけた首相の「決意」はどこまでIOC委員の胸に響くのか…。(高木桂一/SANKEI EXPRESS

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