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【勿忘草】ものさし

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【勿忘草】ものさし

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 足の甲にできた湿疹をこじらせた。もともとは靴ずれが原因だった。外出するのに靴を履かないわけにはいかないから、無理して歩き続けるうちに悪化。ついに患部が甲の3分の1くらいに広がるに至り、病院行きを決意した。

 初めて訪れた皮膚科クリニックで、感じの良い女医さんは「痛いでしょう。かゆみも強そうですね」と同情(?)してくれた。しかし、当の本人は「そんなでもないです」。一般的に、女性の方が痛みに強いというけれど、どうやら私は、かゆみや痛みのものさしがずれているらしく、よく言えば我慢強く、悪く言えば鈍い。

 「これはひどいですよ」と女医さんもあきれるなか、思わずもれた言葉は「病院に行くのが怖くて」。小学生か、と自分に突っ込みながら、指示通りに処方薬を使ったら、症状はみるみる好転した。

 残念ながら、現代の最新技術をもってしても、他人の感覚を正確に測ることはできない。痛みひとつ取ってみても、ある人は「1」の痛みを「10」と捉え、ある人は「10」の痛みを「1」と捉える。そして、他人の感覚を正確に知ることができない以上、「何が正しくて何が間違っているのか」「何が正常で何が異常なのか」といったあらゆる基準も、実はとても曖昧だ。

 そんなことを考えたのは、東京・日比谷のシアタークリエで上演中のミュージカル「ネクスト・トゥ・ノーマル」を見たからだ。日本初演となる同作は、米ブロードウェーでミュージカルとして14年ぶりにピュリツァー賞を受賞。主人公のダイアナ(安蘭けい、シルビア・グラブのWキャスト)は双極性障害を患っている主婦という、今までにない設定の物語である。

 家族や医師は、精神を病んだ彼女を必死に「正常(ノーマル)」に戻そうとする。果たして「正常」とは何なのか、そして「正常」とは幸せなのか。詳しいストーリーは書かないが、見終わった後に考えさせられる作品であることは間違いない。

 結局のところ、幸せを測るものさしは自分の中にしかない。迷ったら、自分の感覚に従うことだ。ただし、痛みやかゆみには早めに対処した方がよい。自戒を込めつつ。(道丸摩耶/SANKEI EXPRESS

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