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【勿忘草】あまちゃんと伊勢神宮
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NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」の放映が9月28日に終了した。軽快なストーリー展開と個性豊かなキャラクターたちが人気を集めて高視聴率を獲得、その影響を受けて本物の海女にも注目が集まった。
ドラマも終盤というころ、私も三重県鳥羽市で海女を取材した。とはいってもドラマに関する取材ではなく、いよいよ今週、クライマックスの遷御の儀を迎える伊勢神宮の式年遷宮に関する取材だ。
伊勢神宮と鳥羽周辺の海女は深い関わりがある。内宮の祭神、天照大御神にささげられる神饌(しんせん)のサザエやアワビを捕っているのだ。特にアワビは伊勢神宮の重要なお祭りの際に供えられる。もちろん遷御の儀のあと、はじめて行われる神様の食事の儀式にも添えられるという。
神饌として使われるアワビは、鳥羽市国崎(くざき)町だけが献上しているという。伊勢神宮創建のころ、天照大御神を伊勢の地に祭った倭姫命(やまとひめのみこと)が国崎を訪れた際、おべんという名前の海女が差し出したアワビの味に感動し、神宮に納めるよう命じた。以来、約2000年もの間続いているという。生のまま運ばれるものもあるが、多くは伝統の技を用いてアワビをリンゴの皮をむくように長くし、干して作られる熨斗(のし)アワビとして納められる。
かつて、国崎の海では毎年旧暦の6月1日に伊勢神宮に献上するアワビを捕る「御潜(みかづき)神事」が行われていた。国崎の海女だけではなく、周辺6つの集落の海女たちも参加したという。神事は130年近く途絶え、アワビの献上だけが行われてきたが、2003年に復活。今年も式年遷宮を記念して開催された。
「これがお伊勢さんのところにいくんやな、と思ったら普段潜るのとは違う感じで、うれしかった。アワビを捕るのは海女にしかできないこと。誇りに思う」
国崎の隣町から参加した海女歴45年のベテラン海女さんは神事を振り返ってこう話してくれた。白い伝統的な海女の装束をまとった彼女の誇らしげな表情が忘れられない。
式年遷宮とドラマのヒット。今年は海女さんにとって、特別な1年になることは間違いないだろう。(佐々木詩/SANKEI EXPRESS)