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「見返してやろうぜ!」 自分に重なる 三浦貴大、平岡祐太 映画「キッズ・リターン 再会の時」
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いっそ、このままくすぶるにまかせちまおうか-。社会の厳しさを肌で知り、将来の自分の姿もうっすらと見えてくる三十路の手前に差しかかれば、誰しも一度はそんな気持ちになったことがあるのではないだろうか。ところが、むしろそこから自堕落な生き方を悔い改め、人生のリターンマッチに臨もうという落ちこぼれコンビがいる。清水浩監督が手がけた「キッズ・リターン 再会の時」は、青春の大切な忘れ物を必死に取り戻そうともがき苦しむ、もう若者とはいえない男2人の物語だ。
そのタイトルからも分かるように、本作は北野武監督(66)の名作「キッズ・リターン」(1996年)の続編。北野作品では、静と動-まるで性格は違うが気心が通じる主人公のシンジ(安藤政信)とマサル(金子賢)が、ボクシングとやくざ、それぞれの世界で頂点を目指すまでが描かれていたが、本作では、共同で脚本も執筆した清水の手により、10年後の世界が描き出されている。
アルバイトをしながら恋人のマナミ(倉科カナ)が経営する喫茶店でご飯を食べさせてもらい、ヒモ同然の生活をしていたシンジ(平岡祐太)は、出所したばかりのマサル(三浦貴大)との偶然の再会をきっかけに、あきらめていたボクシングへの情熱に再び火がついた。一方、マサルはやくざに戻ったものの、時代の壁に追い詰められていく…。
平岡は29歳、三浦は27歳。2人は、同世代のシンジとマサルに共感するところも多いようだ。「演じていて『自分の殻を破りたいな』と意識はしましたね。マサルのせりふでいえば『見返してやろうぜ!』ですよ」と平岡。最近、自分にできることとできないことの見極めがなんとなくつくようになったため、「頑張っても手を伸ばさないと届かないようなもの」にあえて挑戦するというスタンスで仕事に臨むようになったそうだ。本作でプロボクサーの体と動きに限りなく近づこうと努力を重ねたのも、そんな考えの延長線上にある。
一方、三浦も感じ方は似ている。「この年齢だから、自分で何とかしようと思ってもできないことがいっぱい。でも何とかしたい。このモヤモヤ感。マサルはこんな気持ちなのかなと感覚的に分かっていたから、彼に感情移入はしやすかったですね」。ただ、何が何でも自分の殻を破りたいかといえばそうでもない。特に仕事ではそうだ。「僕の仕事は、作品を見てくれる人からじっくりと自分の仕事ぶりを見られること。評価は見てくれた人たちの感想がすべて。僕は何もできないけれど、何かを発信したいといった気持ちは常にあるんですよ」
それでは「見返してやる」と思ったことは? 平岡が「細かいことですが、言えば言うほど自分が小さい人間になってしまうと思うので…」とお茶を濁せば、三浦は「20歳まではずっと『見返してやろうぜ!』と思っていました」とキッパリ。真意はこうだ。三浦の両親は俳優の三浦友和(61)と元歌手、山口百恵さん(54)。「周囲は『誰々の息子』みたいな呼び方をするんですよ。だから僕は20歳までは『俺は俺だよ!』という強い気持ちがありました」。三浦は俳優として数々の映画に出演し、立ち位置が明確となったいま、「今では『見返してやろう』だなんてまったく思っていません」と力強く語った。
10年後、さらに続編が作られた場合、2人はどんなシンジとマサルを演じるのだろうか。平岡はしばらく考えた後、「たぶんシンジはボクサーを引退しているだろうなあ。きっとマナミとは家庭を築いているはずです」とポツリ。自分の中では本作で物語は完結したとの思いが強いからだ。三浦は逆の考えだ。「まあ、少なくともマサルは死んではいないと思うので、堅気になって普通に暮らしているかもしれませんよ。2作も続いたのだから、物語のバックボーンはしっかりしている。普通に暮らす姿を撮るだけでも面白い映画になるんじゃないかな」。10月12日から全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:伴龍二/SANKEI EXPRESS)
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