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日米ポストシーズン 重圧に打ち勝ち歓喜爆発
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米大リーグ、ボストン・レッドソックスの守護神、上原浩治(38)が「ビッグ・パピ」こと主砲のデビッド・オルティス(37)と抱き合っている。この後オルティスは上原を高々と抱え上げた。優勝シーンのようだが、そうではない。
デトロイト・タイガースとのリーグ優勝シリーズ第2戦。本拠地フェンウェイ・パークで初戦を落としたレッドソックスはこの試合、劣勢の八回にオルティスが同点満塁ホームランを放ち、九回のマウンドを上原が3者凡退に抑えた。その裏、サルタラマッキアのサヨナラ打で1勝1敗のタイに追いついた場面だ。
シーズン中の1勝に、これほどの歓喜と興奮があるか。おそらく、ない。ポストシーズンという短期決戦の集中力が、選手にアドレナリンを放出させているのだろう。
いつも冷静な元ヤンキースの松井秀喜(39)が、やはりプレー中に歓喜を爆発させたことがある。あれもリーグ優勝シリーズのレッドソックス戦だった。その理由を松井は、こう話した。「ゲームの意味の大きさと、試合展開。相手チームや投手との因縁などが積み重なり、もう一つ、直接自分のプレーではなかったときに、感情は爆発するのかもしれません」
上原にとっては、まさにそのすべてが重なったシーンだったのだろう。ポストシーズン初勝利となる最高の救援をみせたとはいえ、サヨナラの殊勲はサルタラマッキアのもの。抱き合った相手が同点満塁弾のオルティスというのも象徴的だ。
ビッグ・パピとの抱擁は、上原がいかにチームに溶け込み、信頼されているかを表すシーンでもある。何より、メジャーリーグのポストシーズンの1試合1試合が、どれだけ大きな意味を持ち、重圧を選手らに強いているかも物語っている。
だからスタンドのファンも、レギュラーシーズン以上に興奮する。ヤンキースの主将、デレク・ジーターは、ポストシーズンこそ本当のシーズンと話したこともある。
日本のクライマックスシリーズも、メジャーのポストシーズンを参考にした。両リーグ3位同士の日本シリーズがあり得るなど賛否はかまびすしいが、今季も見事に盛り上がっている。プロ野球は客商売。スタンドの興奮をみる限り、すでに定着したと認めてもいいのではないか。
≪アルプスを染めた満開の桜花≫
大きな写真は、10月13日のセ・リーグのクライマックス・シリーズ(CS)阪神対広島第2戦の八回、阪神の西岡剛(29)が併殺打に倒れた場面だ。主役は西岡ではない。吉野のお山かと見まごうほど満開の桜色に染まった甲子園球場のアルプススタンドである。
10月だというのに日本列島はぽかぽかと暖かく、一塁側カメラ席から撮った西岡の背景、三塁側スタンドは、夏服の白と広島応援の赤、虎の黄色も入り交じり、桜満開のような色模様となった。
そのままカメラを外野席の方へ向ければ、応援の色彩が強まるにつれ、スタンドは真っ赤な紅葉狩り仕様となる。甲子園が、これほど他球団の応援カラーに染まるのも珍しい。それだけこのCSに懸ける広島ファンの思いが強烈だということなのだろう。
ファンの思いに乗ったカープナインは阪神を圧倒した。赤の爆発といってもいい。いいところなく敗れた阪神ファンにも慰めはあった。
「代打の神様」桧山進次郎(44)が第2戦の最終回、代打で2ランを放ち、甲子園のファンに別れを告げた。真っ赤な広島応援席も拍手を送った。CSがなければ見られない光景だった。
パ・リーグのCSはさらに熾烈(しれつ)だった。ともに大勝の1勝1敗で臨んだ第3戦は投手戦となった。六回途中でマウンドを降りた西武の牧田和久(28)はベンチにたどり着くのを待てず、涙を流した。CSへの思いの強さだろう。過去の日本シリーズでは、勝利目前の一塁の守備で、あの清原和博が泣いたこともある。
ロッテは躍動感に満ちていた。五回、鈴木大地(24)の先制本塁打にはベンチ中がガッツポーズを作った。六回、井口資仁(ただひと、38)の勝ち越し弾でも同様だった。シーズン終盤8連勝で波に乗る西武を退け、セの広島とともに、3位からの下克上で、ファイナルステージに挑む。
待ち構える覇者はセの巨人、パは東北楽天。広島もロッテもレッドソックスも、まだ何も得ていない。最後に勝ち残ってこそのポストシーズン。お楽しみは、まだまだ続く。(EX編集部/撮影:岡田亮二、森本幸一、春名名、中井誠、共同/SANKEI EXPRESS)