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「芸術は社会を変革してゆくエンジン」 世界文化賞 受賞の4氏会見
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世界の優れた芸術家を顕彰する「高松宮殿下記念世界文化賞」(主催・公益財団法人日本美術協会=総裁・常陸宮殿下)の第25回受賞者による合同記者会見と報道陣との個別懇談会が15日、東京・虎ノ門のホテルオークラ東京で行われた。
出席した受賞者は、絵画部門=ミケランジェロ・ピストレット(80)〈イタリア〉▽彫刻部門=アントニー・ゴームリー(63)〈イギリス〉▽建築部門=デイヴィッド・チッパーフィールド(59)〈イギリス〉▽演劇・映像部門=フランシス・フォード・コッポラ(74)〈アメリカ〉-の4部門4氏。音楽部門のプラシド・ドミンゴ氏(72)〈スペイン〉はこの日開催のコンサートのため、欠席した。
演劇・映像部門のコッポラさんは、ベトナム戦争を扱った「地獄の黙示録」(1979年)をフィリピンで撮影した際、度々日本を訪れている。「狂気に満ちた作品を撮っていたので、東京の落ち着いた雰囲気にどれほど助けられたことか」と当時を振り返った。
この作品の日本語字幕を担当した戸田奈津子さん、定宿だった「大木戸 多満川(たまがわ)」(東京・四谷)の女将(おかみ)、柳谷みや子さんも祝福に駆けつけた。柳谷さんは監督が忘れていったタイプライターを手渡すと、監督はボディーにサインして柳谷さんにプレゼントした。
建築部門のチッパーフィールドさんは日本での世界文化賞受賞に「大変な名誉。ワクワクしている」と興奮を隠さない。建築家として日本から歩み出し、建築をはじめ、日本文化に影響を受けた。「日本の人には当然だろうが、四季を愛(め)でるなど他の国では失われたものが日本には残っている。普通のことを特別にするのが日本の特質です」
代表作である独ベルリンの「新博物館」修復でも「モノの中に精神性を見いだす日本のあり方」を念頭に素材を考えたという。「日本での受賞はものすごい励み。私の人生を変えるでしょう」
ラフな白いTシャツ姿で現れた彫刻部門のゴームリーさんは「気楽に話しましょう」と和ませ、手ぶりを交えながら芸術観を披露した。
自らの肉体から型取りした人体彫刻について、「自分が生きている瞬間を客体化した」と哲学的に解説。20世紀の抽象彫刻に大きな影響を与えたブランクーシの作品を例に、「変革をしていくことが芸術の責務」などと力強く語った。今は大分県別府市で新作に取り組んでおり、「海の近くで寺や神社がある所。今週にも現地に行きます」。
絵画部門のピストレットさんは、1960年代に自身が主導的役割を果たした前衛美術運動「アルテ・ポーヴェラ(貧しい芸術)」について、「舟にターンを促す“ブイ”のように時代を変える力強いステートメント(声明)だった」と振り返った。
大理石やブロンズ、キャンバスなど伝統的画材ではなく、布や鏡など身近な素材を使い、行き過ぎた資本主義や消費社会への懐疑を表したピストレットさんは「現在もまた、重要な時代の転換点だ」と語る。「自然と人工のバランスが取れた“楽園”を目指すべきだ。芸術は社会を変革してゆくエンジンとなり得る」と呼び掛けた。
記者会見には、各国の元首相らで構成する国際顧問のうち、海外からの5氏と中曽根康弘元首相が出席し、「世界文化賞」25周年の意義などを述べた。
授賞式典は16日夕、東京・元赤坂の明治記念館で行われる。(SANKEI EXPRESS)