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実用化へ加速するスマートハウス

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実用化へ加速するスマートハウス

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 東京ガスとパナソニックは10月21日、世界初となるマンション向け家庭用燃料電池「エネファーム」を開発したと発表した。2014年度から発売し、初年度は年間500台の受注を目指す。

 マンション向けエネファームは、戸建て向けより強い耐震性と耐風性が求められるが、機器本体を固定する脚部の強度を高めたほか、戸建て用では複数に分散していた排気口を1カ所に集約。空気の強さを一定に保ち、秒速30メートルの強風が吹いても運転できるようにし、高層階でも設置可能とした。

 発電出力は200~750ワットで、火力発電からの電気と都市ガス給湯器からの給湯を行う方式と比べ、二酸化炭素排出量をほぼ半減できる。モデルケース(3人家族)では年間の光熱費は約3~4万円節約でき、二酸化炭素排出量は約1.0トン削減が可能という。

 東ガスは09年からエネファームの一般発売を世界で初めて開始し、累計2万4000台を販売。13年度は年間1万2000台、20年に累計30万台の販売を目指している。

 ≪世界初、マンション向けエネファーム発売へ≫

 燃料電池や太陽光発電などの自然エネルギーを軸に家庭の省エネを可能にする「スマートハウス」の実用化が加速してきた。自然エネの活用と、家電製品をネットワークにつないで制御し、エネルギー消費量がひと目でわかる管理システムを導入する仕組み。ハウスメーカーや電機メーカーのほか、自動車メーカーなども垣根を越えて参入し、得意技術を競っている。

 「スマートハウスはさらに拡大し、普及期を迎え、住まい選びのスタンダードになる」。積水化学工業のスマートハウス新商品「スマート・パワーステーション」シリーズを10月21日発表した高下貞二専務はこう力を込めた。

 普及に追い風

 従来に比べ、大容量の太陽光発電システムを屋根に搭載し、蓄電池の耐久性も高めた。販売価格は鉄骨系住宅の場合、蓄電池付きの標準仕様で3.3平方メートル当たり66万円台からで、木質系住宅は69万円台から。14年度1200棟の販売を目標にしている。

 政府は20年を目標に自然界に存在する「一次エネルギー」の年間消費量をおおむねゼロとする「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」を、標準的な新築住宅とすることを表明し、補助金などの支援策を実施する。さらに、原発停止に伴う電力料金の値上げもあり、スマートハウス普及に追い風が吹く。

 ハウスメーカーや電機メーカーが中心だったが、自動車メーカーもエコカー技術を生かし、スマートハウス普及に本腰を入れる。ホンダは燃料電池電気自動車から家庭へ電力を供給する実験を北九州市で実施。エコカーを使い、電力使用量を平準化できる技術として期待されている。

 ただ、スマートハウス技術の普及を阻むのは、通常の家電製品やエネルギー設備に比べ割高な価格だ。

 「高価格の壁」

 21日発表した東京ガスとパナソニックの家庭用燃料電池「エネファーム」のマンション向け新製品は、戸建てが中心だったスマートハウスを、マンション向けにも広げるもので、都市部での市場が一気に広がる可能性を秘めている。

 その一方で、「価格競争力は不十分」(東ガスの担当者)との評価は否めない。エネファームの戸建て向け最新機種の価格は199万円台。現在45万円の国の補助金と店頭での割引を差し引いても実売価格は120万円台。「基本設計は同じ」(パナソニックの担当者)というマンション向けも同水準とみられる。

 来年4月の消費税増税の影響で、住宅着工の鈍化は避けられない状況。スマートハウスの普及を加速させるには、市場の拡大やコストダウンなど、「高価格の壁」を打ち破るメーカーの努力が欠かせない。(藤原章裕、森田晶宏/SANKEI EXPRESS

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