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ジャズ発ジャンル超越コラボレーション ロバート・グラスパー、三宅純
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ジャズというジャンルには、ある種のイメージがあるだろう。ムーディーな4ビートのリズム、激しいアドリブの応酬、ビッグバンドによる優雅なスイングなどなど。でも、近年はさらにジャズの解釈の拡大化が進み、「これもジャズなの?」と思ってしまう面白いアーティストが第一線で活躍している。
ロバート・グラスパーは、そういったボーダーレスなジャズマンの最先端だ。ゴスペルやソウルなど多くの音楽から得たエッセンスを取り入れた上で、高度なテクニックを持ち、繊細なフレーズから大胆なアドリブまで弾きこなせるピアニスト。しかし、エクスペリメント名義の作品は、R&Bやヒップホップのアーティストが多数参加しており、なんの前情報もなければピアニストのリーダーアルバムとは思えないほど彼のプレーは控えめだ。昨年発表し、グラミー賞のベストR&Bアルバムを受賞した「ブラック・レディオ」の続編である「ブラック・レディオ2」も、そのスタイルは継続。コモン、ジル・スコット、スヌープ・ドッグ、ノラ・ジョーンズなど目まいがするほど豪華なゲストを迎え、ボーカルとラップがジャズトラックの上で躍動するが、屋台骨となるサウンドはやはりピアノ。華やかながらも一定のクールなトーンを保っているのは、やはりグラスパーにしか成し得ない技なのだ。
スタイルはまったく違うが、三宅純もジャズという切り口では語り切れないユニークなミュージシャンだ。本来はジャズトランペッターだが、クラシックからワールドミュージックまであらゆるジャンルを取り入れ、独自の美学でコンセプチュアルな作品を作り続けている。その振り幅の大きさは、新作「ロスト・メモリー・シアター act-1」に参加したミュージシャンの顔ぶれから一目瞭然。元トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーン、神秘的なコーラスのブルガリアン・ボイス、オペラ唱法でアバンギャルドな世界を表現するニナ・ハーゲンら、国籍もジャンルも軽々と飛び越えた音楽家が集結。まるで巨大な劇場に迷い込んだような感覚に陥る映像的な作品だ。もはやジャズではないと言われそうだが、この強烈なミクスチャーこそジャズという音楽の本質なのである。(音楽&旅ライター 栗本斉(ひとし)/SANKEI EXPRESS)