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科学
火星一番乗り、過酷な旅に挑む NASAが有人宇宙船「オリオン」公開
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米航空宇宙局(NASA)は10月28日、火星や小惑星に人類を送り込む次世代有人宇宙船「オリオン」の試験機の開発状況を公開した。2030年代半ばまでの火星有人飛行の実現を目指し、来年秋から試験飛行を開始する。政府機関閉鎖の影響で中止が懸念されていた火星の大気を調べる無人探査機「メイブン」の打ち上げも予定通り11月18日に行う。米国の威信をかけた“火星一番乗り”に向け、準備は着々と進んでいるが、片道だけで半年以上かかる過酷な旅を克服するには、解決すべき課題も山積している。
「われわれの計画は、最終段階に来ている。(打ち上げは)すでに軌道に乗った」。NASA、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)とともにオリオンの開発を担う米航空・宇宙企業ロッキード・マーチンでプロジェクトを担当するラリー・プライス氏は、米NBCニュースにこう語った。
組み立てはフロリダ州のケネディ宇宙センターで行われており、今月(10月)下旬には電源をオンにして電子機器やソフトウエアが正常に作動することを確認。火星飛行で想定される無数のリスクに備えたテストも終えたという。
NASAの公式サイトによると、スペースシャトルの後継機として開発されているオリオンは、月面着陸を実現したアポロ宇宙船に似た円錐(えんすい)形のカプセル型。定員は4人で、直径約5メートルと、3人乗りのアポロよりもふた回りほど大きく、容積も約3倍を確保した。羽のような太陽電池パネル4枚を備えている。
来年9月にまず無人での飛行試験を行う。ロケットで国際宇宙ステーション(ISS)がある高度の約15倍に相当する5800キロの上空まで打ち上げ、地球を2周した後、秒速9キロで大気圏に突入し帰還する。宇宙船の表面温度は約2200度にも達し、過酷な地球大気圏への再突入に耐えられるかを試す。
17年には、同時に開発を進めているオリオン専用の大型ロケットを使った無人飛行試験を実施。21年に初の有人飛行に挑み、月軌道へ打ち上げる計画だ。すでに有人飛行を行う宇宙飛行士候補8人の精鋭を選出し訓練を行っている。
一方、無人探査機メイブンは、来年9月に火星に到達し上空から大気の状況などを調査する。すでに火星に着陸して活動中の無人探査機「キュリオシティー」の観測データも併せ、宇宙飛行士が火星に着陸して探査活動を行うためのプランを練るのが狙いだ。
だが、火星への旅は過酷だ。直線距離は最短でも約5500万キロと、アポロが経験した月までの約38万キロの約145倍に上り、最低で片道半年もかかる。現在開発中のオリオンは、宇宙空間で最大6人が21日間生活できる性能しか備えておらず、酸素や飲料水、食料の確保を含め大幅に滞在可能期間を延ばす必要がある。
最大の課題とされるのが、宇宙飛行士の健康を蝕む宇宙放射線への対策だ。地球を取り囲む磁気圏外に出るため、従来の宇宙船の隔壁では十分に遮断できない強い銀河宇宙線を浴び続けることになる。キュリオシティーの測定データからは飛行士が浴びる放射線量は許容量を超える可能性があると判明した。
過酷な旅で遭遇する厳しい宇宙環境から飛行士をどうやって守るのか。人類の英知の結集が必要だ。(SANKEI EXPRESS)