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川上善兵衛のマスカット・ベーリーAとブラック・クイーン 青木冨美子
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日本ワインのパイオニアで、新潟県上越市にある『岩の原葡萄園』の創業者川上善兵衛(以後善兵衛)が日本の風土に合わせて開発した「マスカット・ベーリーA(以後MBA)」。今年6月OIV(国際ブドウ・ワイン機構、本部パリ)によって、ワイン用ぶどう品種として登録されました。この登録により、MBAはカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネ等の国際品種と同列のぶどうとして世界に認められたことになり、EU向けの輸出ではラベルに品種名表示することが可能になります。
「いつか世の人が自分を認めてくれる日が来るであろう」と書き遺し、76歳で他界した善兵衛の愛したMBAが世界に向けてスタートします。現在、北海道を除く日本全土で栽培されているMBAですが、岩の原葡萄園のワインは、最初は香り控えめで、徐々に香味が広がってくる印象です。雪に埋もれ、雪解けで少しずつ花開いていく上越のぶどうらしい、楚々とした風情です。
善兵衛が開発した優良22品種のなかのブラック・クイーン(以後BQ)は、他の品種にはない十分な酸味が特徴。岩の原葡萄園主催のセミナーの後、ワインと料理のマリアージュのために、アグネスホテルの大河原総料理長が用意してくれたのが豚素材。「BQを飲んだら脂分が欲しくなった」と総料理長。そこで新潟産豚肩ロース肉のグリエにBQの赤ワインソース添。2011は熟した果実がワインの酸味をマスキングし、バランスの良い味わいです。豚素材と合わせることでうまみが倍増しました。清涼感のある2011はBQの新しい可能性を感じさせる1本だと思います。(ワインジャーナリスト 青木冨美子/SANKEI EXPRESS)