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【軍事情勢】「いずも」と「出雲」の注目度

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【軍事情勢】「いずも」と「出雲」の注目度

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 沖縄県の本島~宮古島間上空で10月末、中国軍機が連日出入りを繰り返した。脅威度は《意図と能力》で決まる。中国軍の《意図》は懸念材料だが《能力》も大いに警戒・監視する必要がある。特に中国人の場合、《能力》は《高さ》だけでなく《低さ》にも注意が不可欠だ。《低さ》は、昭和12(1937)年の第二次上海事変で実証済み。自衛隊のスクランブル=緊急発進で、中国軍機がパニックに陥り、沖縄県民を誤爆する悪夢はゼロとは言い切れない。

 中国軍機が誤爆する悪夢

 中国軍による今次編隊飛行の《意図》は、第一列島線防衛にある。九州~沖縄~台湾を結ぶ第一列島線は、中国軍による台湾侵攻などの際、来援するかもしれない米空母打撃群の進出を食い止める、中国戦略の生命線。《能力》もまた、近代化が急速に進む。ただ、軍用機搭乗者の技量は優劣が混在、不適格者の数は少なくない。

 その点、第二次上海事変における中国国民党空軍と状況が似る。《8月14日》の誤爆に関する経緯や原因は記録や報道により違うが、総合すると-

 《大日本帝國(ていこく)海軍第三艦隊旗艦・巡洋艦『出雲』などを爆撃した中国軍機の内、3機を対空砲火や艦上機で撃墜する。しかし、残りの中国軍機は租界(治外法権を持つ外国人居留地)のホテル2軒と娯楽場などを爆撃。エドウィン・ライシャワー元駐日米大使(1910~1990年)の実兄を含む1200人以上が死傷(死亡説アリ)した》

 「2000人以上死亡/3600人死傷」情報もある。「欧米列強の権益に損害を与え対日国際非難を喚起せんと、意図的に租界を爆撃した」との観測も出ているが、小欄は誤爆説を採る。

 国民党空軍を育てたのが、米陸軍航空隊大尉。米政府の内諾を得て国民党空軍参謀長に就いた。複数の研究者が中国人搭乗者の技量に関し、参謀長の証言・日記を著書で紹介している。例えば、夜間爆撃より帰還したある夜の「恐るべき光景」。

 「一番機は滑走路を駆け抜け水田に飛び込み、機体は四散。二番機は地上で宙返りし、爆発炎上した。四番機は、炎上している二番機の消火に急行していた消防車に激突。十一機のうち五機が着陸に失敗し、四人の操縦士が死んだ」

 無傷で国内外から脚光

 出雲へは《急降下爆撃》ができず《水平爆撃》か《緩降下爆撃》を実施したようだ。機体を水平にしたままの爆撃は対空砲火による撃墜確率が高く、高高度からの爆撃にならざるを得ない。ただ艦は動いており、爆弾の落下時間が長いと命中率は低い。反面、艦艇に肉薄する角度が急なほど爆撃の誤差は縮まるが、高い技量を求められる。

 中国軍機は出雲の弾幕に怖(お)じ気(け)づき、せめて既成事実を残そうと高高度から《推測爆撃》。結果、風や慣性により租界に落ちた可能性すらある。天候不良だったとはいえ、英米海軍の巡洋艦まで攻撃し、しかもこちらも命中していない。誤爆・事故は《8月14日》以降も続発。米国人参謀長は「万策尽きた。パイロットたるや、ぎこちない動きで次々に出てくる射的場のアヒルだ」と嘆いている。

 無傷の出雲は国内外の新聞報道で脚光を浴びたが、出雲は奇しくも33年前の同じ《8月14日》、国内外で称讃される武勲と武士道を打ち立てている。

 1904年のこの日、日露戦争・蔚山(ウルサン)沖海戦において、出雲を旗艦とする第二艦隊がロシア巡洋艦リューリクを撃沈した。リューリクはじめ露艦隊はその2カ月前、降伏を拒んだ兵員輸送中の帝國陸軍徴傭(ちょうよう)運送船3隻を撃沈・大破させていた。戦死者は1334人にのぼり、補給航路防衛を担う第二艦隊司令長官・上村彦之丞(かみむら・ひこのじょう)中将(後に大将/1849~1916年)は、国民の激憤の矢面に立たされた。

 「露探提督=ロシアの諜者」と蔑称され、留守宅には石や屠腹(とふく)を勧告する短刀まで投げ込まれた。議会でも「無能」呼ばわりされた。だが上村は「女房は度胸が据わっているから」と、笑っていたという。蔚山沖海戦は敵討ちでもあったが、沈没に瀕(ひん)しながら砲撃を続けるリューリクの戦振(いくさぶ)りに、上村は「敵ながら天晴(あっぱ)れ」と感じ入り、630人近くを救出。「これでこそ日本武士」などと、内外の新聞は称(たた)えた。

 海自で最大の艦

 メディアの視線をくぎ付けにした点では、8月に進水した海上自衛隊で最大の艦となるヘリコプター搭載護衛艦《いずも》も《出雲》級だ。外国でも-

 米ABCテレビとAFP=フランス通信社「日本が第二次世界大戦以来の巨大軍艦を進水」▽国際時事雑誌ザ・ディプロマット「“疑似空母”姿現す」▽カナダの軍事専門誌・漢和ディフェンスレビュー「米F35B(次世代)戦闘機搭載が可能/8機のF35Bは、24機の中国空母・遼寧の艦上戦闘機J(殲)15に対抗できる」

 精査すると、不正確な報道もあるが、過剰反応した中国の“報道”は突出して酷(ひど)かった。

 《いずも》と《出雲》をダブらせ「紛れもない軍拡行為で、日本のタカ派が帝国海軍を片時も忘れていないことの反映。日本が国際社会の感じ方を顧みず、侵略戦争に対する人々の記憶を呼び起こすなら、国際的イメージは必ず損なわれる」=中国共産党系サイト・人民網。

 中国で「国際」とは、中国と韓国だけを指すらしい。狡猾(こうかつ)な“報道”は続く。「出雲は中国侵略戦争時に中国魚雷艇の攻撃を受けた」と。第二次上海事変戦史にはその先がある。魚雷艇は返り討ちに遭い撃沈、引揚げられて帝國海軍に接収される不名誉まで演じた。出雲は爆撃に続きまたも無傷だった。

 この際、ザ・ディプロマット上で示した米海軍大学のジェームズ・ホルムス教授の言葉を、中国に贈りたい。

 「(日本のように)練達した海軍国は、大言壮語することなく軍艦を建造・配備する。『いずも』は穏やかな規模だが、日本国民には世界水準の海軍力に護(まも)られているとの安心感を与える。米国には安全保障の重荷をシェアする信用できる同盟国、豪州やインドには、いざというときに助けてくれる魅力的友好国に見える」

 教授は「敵対国には抑止力になる」と締め括(くく)った。もっとも「抑止力」は、中国の侵略意図は減じても、アクシデントの結果として起こる誤爆には効き目がない。

 中国軍に「技量を上げて」とも言えないし…。(政治部専門委員 野口裕之/SANKEI EXPRESS

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