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「チーム力」でジュニア育成 20年東京五輪へ 萩原智子

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「チーム力」でジュニア育成 20年東京五輪へ 萩原智子

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 【笑顔のアスリート学】

 2020年の東京五輪・パラリンピックの開催が決まって以降、スポーツ界全体が盛り上がっている手応えを感じる。7年後の活躍が期待される若手アスリートたちも、メディアなどさまざまなところで取り上げられている。ある世論調査では、7年後に観戦したいスポーツの第1位に、「競泳」が挙げられていた。元競泳選手として、また日本水泳連盟(水連)の理事としてこの上ない喜びだ。

 もちろん、喜んでばかりはいられない。7年後に向け、より一層のレベルアップが期待されていることも事実だ。

 強化現場でも、水連の競泳委員会委員長であり、日本代表チームの監督として指揮をとる上野広治監督を中心に、さまざまな角度からのアプローチが始まっている。

 6年前にスタートした強化プランのひとつに、「エリート小学生研修合宿」がある。全国ジュニアオリンピックカップで活躍した小学生のスイマーを招集し、トップアスリートが集う東京・国立スポーツ科学センター(JISS)で、短期合宿を行うものだ。

 最先端の施設で、科学委員による水中映像の撮影やトレーナーによる身体測定などが行われる。客観的なデータを示すことで、選手たちが自分自身の現状を把握する。そして、長所と短所を明確にすることで、課題を再認識し、今後の強化につなげていくのだ。

 エリート合宿卒業生の今井月(るな)

 このエリート小学生合宿の卒業生には、女子平泳ぎの中学1年生、今井月(るな)選手(本巣SS)がいる。1年前の合宿に参加し、女子のキャプテンも経験した彼女は、大きくステップアップした。合宿から半年後の今年4月に行われた日本選手権では、200メートルで3位と大躍進。10月に中国で行われた東アジア大会では、13歳とチーム最年少で日本代表に選ばれ、初めての国際大会で、いきなり2種目で銅メダルを獲得した。

 今年も9月に、24人の小学6年生を招集し、3泊4日の日程で合宿が行われた。男子200メートル・バタフライで北京、ロンドンと五輪2大会連続銅メダルを獲得した松田丈志選手を育てた久世由美子コーチが中心となり、強化メニューが組まれた。

 16年リオデジャネイロ、さらに20年東京に向け、体力面でのレベルアップはもちろん、精神面や生活面を中心としたマナーやルールなどの研修も重視して行われた。保護者に対しても、久世コーチから選手との接し方などのレクチャーの時間が設けられ、充実した時間となった。

 「大きな声での挨拶や返事、時間厳守、素早い行動、周りへの気配りや心配り、チームワークの大切さ、健康管理、意思表示ができる選手の育成」。ジュニア時代からこうしたことを目的に掲げ、人間的にも魅力的なトップスイマーになるために必要な言動を伝授しているのだ。

 ここで挙げたことは、アスリートとしても、一人の人間としても、当たり前のことだ。しかし、当たり前のことを当たり前にできるかが、重要なポイントになってくる。

 水泳界全体で育成を行う

 私もスタッフとしてサポート。五輪金メダリストの柴田亜衣さんや銅メダリストの宮下純一さんも参加し、ジュニア選手へアドバイスを送ってくれた。

 初日は、緊張感と不安でいっぱいのジュニアスイマーたちが、さまざまな経験をしていく中でどんどん表情が変わっていったのが印象に残った。

 キラキラしたまなざしや一生懸命な姿にたくましさを感じ、これからどんなスイマーに成長していくのかが、楽しみで仕方ない気持ちになった。合宿中には、松田選手をはじめ、同じく五輪メダリストの入江陵介選手や立石諒選手らも顔を出してくれた。ジュニアの選手にとっては大きな刺激になったはずだ。

 指導者、スタッフ、トレーナー、そして現役選手を含めた日本水泳界全体でジュニアスイマーの育成を行っていく-。これこそが、日本競泳陣の「チーム力」だ。取り組みが結実する日が楽しみでならない。(日本水泳連盟理事 萩原智子/SANKEI EXPRESS

 ■はぎわら・ともこ 1980年4月13日、山梨県生まれ。身長178センチの大型スイマーとして、2000年シドニー五輪女子200メートル背泳ぎ4位、女子200メートル個人メドレーで8位入賞。02年の日本選手権で史上初の4冠達成。04年にいったん現役引退し、09年に復帰。子宮内膜症、卵巣嚢腫(のうしゅ)の手術を乗り越え、現在は講演・水泳教室やキャスターなどの仕事をこなす。

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