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社会
両陛下ご葬送 350年ぶり火葬に 御陵縮小、合葬は見送り
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宮内庁発表の骨子=2013年11月14日 宮内庁は11月14日、天皇、皇后両陛下のご意向で検討していた陵のあり方と葬送方法の変更を、概要にまとめて公表した。江戸時代前期から行われてきた天皇と皇后の土葬を改め、火葬とすることなどが盛り込まれた。天皇陵と皇后陵を同一にする合葬(がっそう)は見送られた。同じ敷地にそれぞれの墳丘を造り、敷地規模をこれまでより小さくすることで、両陛下が望まれる簡素化を図る。検討内容はすでに内閣に報告されており、約350年ぶりに土葬の伝統が変わることになった。
宮内庁は「本検討は将来にわたって基準となり得る」としており、皇太子さま以降もこれに沿うこととなる。変更の背景には、東日本大震災などで経済的に疲弊する国内情勢を踏まえられた両陛下の「極力国民生活への影響の少ないものとすることが望ましい」とのご意向がある。会見した宮内庁の風岡典之(かざおか・のりゆき)長官は「畏れ多く奥深い課題だったが、報告できたことにほっとしている」と述べた。
宮内庁によると、天皇陛下は大正、昭和天皇と皇后の陵があり、自らの陵も造営される予定の武蔵陵墓地(東京都八王子市)に余地がなくなってきていることを懸念。陵をこれまでより縮小し「合葬も視野に入れてはどうか」と宮内庁に提案された。
宮内庁の検討結果では、火葬は昭和天皇、香淳皇后(こうじゅんこうごう)、大正天皇、貞明皇后(ていめいこうごう)の4陵がある武蔵陵墓地に、その都度設置する専用の施設で行われる。火葬の前後には、火葬に伴う小規模な葬送儀式が新たに設けられる。その後、政府要人や外国の賓客も参列する「葬場殿の儀」や「陵所の儀」を、昭和天皇の崩御時とほぼ同じ流れで行うが、詳細は今後詰める。天皇、皇后両陛下の陵は大正天皇陵の西側を予定している。
天皇陵と皇后陵は4陵と同様に、それぞれ別々の墳丘とするが、これまでとは異なり、同じ敷地内で一体的になるよう建造される。墳丘の形状は4陵と同様に上円下方(じょうえんかほう、上段が円形で下段が四角形)で、敷地は昭和天皇陵と香淳皇后の陵が合わせて4300平方メートルだったのに対し、8割程度の約3500平方メートルとする。
合葬を見送った理由を、宮内庁は「皇后さまが畏れ多く感じられている」などとしている。今回の変更は「陵を簡素にし、火葬にすることが望ましい」とする両陛下のご意向で宮内庁が昨年4月26日に検討を表明、1年半をかけ作業を進めてきた。検討対象は皇室行事として行う一連の葬儀で、国事行為である「大喪(たいそう)の礼」は対象外。
≪「国民と共に歩まれる」お心に沿う≫
陵のあり方と葬送方法の変更の背景にある「極力国民生活への影響の少ないものとすることが望ましい」という天皇、皇后両陛下のご意向は、国民と共に歩むことを最も大切に考えられてきた両陛下のご姿勢を色濃く反映したものだ。
「国民生活に大きく影響を与えている厳しい経済情勢の最中のことであり、祝っていただくことを心苦しくも感じています」
天皇陛下は2009(平成21)年4月、ご結婚50周年に先立って行われた宮内記者会との会見でもこう述べて、前年9月のリーマン・ショック後の景気悪化に苦しむ国民を深く案じられた。
国民に寄り添われる両陛下のお気持ちは、さまざまな形で示されている。幾多の被災者、病気や障害など困難に苦しむ人々の元を訪れ、膝を折って耳を傾けられてきた。今年3月11日の東日本大震災2周年追悼式でも、陛下は「この厳しい状況の中、被災地で、また、それぞれの避難の地で、気丈に困難に耐え、日々生活している被災者の姿には、常に深く心を打たれ、この人々のことを、私どもはこれからも常に見守り、この苦しみを、少しでも分かち合っていくことが大切だとの思いを新たにしています」と述べられた。
一方、今回の宮内庁の検討結果で火葬が復活することになったが、以前は火葬が定着していた時代もあり、伝統は変遷している。宮内庁によると、神話時代も含めた歴代天皇で土葬は73人、火葬は41人、不明は8人となっている。古代は土葬だったが、仏教の影響が強かった飛鳥時代の持統天皇が初めて火葬となった。その後は、土葬と火葬が混在し、室町時代中期から火葬が定着するようになった。
江戸時代初期の後陽成天皇の死去(1617年)までは火葬が続いたが、儒学に傾倒した後光明天皇の死去(1654年)からは土葬になった。明治維新を経て、大正末期に制定された皇室喪儀令により、天皇と皇族の葬儀は土葬が前提となった。しかし終戦後、喪儀令は廃止され、現在は明確な規定はない。(SANKEI EXPRESS)
≪陵≫
・合葬(がっそう)とはせず、天皇陵と皇后陵が一体的となるようにする
・大正天皇陵の西側に建造し、昭和天皇陵と香淳(こうじゅん)皇后陵を合わせた面積の8割程度とする
・形状はいずれも上円下方墳とし、鳥居などは別々に設ける
≪葬儀≫
・皇室の歴史における葬送方法の変遷に鑑み検討した結果、火葬がふさわしい
・武蔵陵墓地内に専用の火葬施設を設置する
・告別式に当たる「葬場殿の儀」を行う場所は、国民生活への影響や環境への配慮などの観点を踏まえ、今後検討する