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【逍遥の児】世界を舞台に活躍する篠笛奏者
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美しき篠笛(しのぶえ)奏者と会う。山田路子さん(29)。千葉県習志野市出身。約束の午前9時。待ち合わせ場所に現れた。焦げ茶色を基調にした秋らしい装い。長い髪をすっきり後ろで束ねている。
彼女は布包みを大事そうに抱えていた。テーブルのうえにそっと置き、包みを開く。篠笛。そして能楽で用いる能管もある。わたしは初めて、篠笛をしげしげと見た。篠竹に穴を開けただけ。極めて簡素な楽器だ。
彼女が篠笛と出合ったのは、高校生のときだった。千葉県立八千代高校の和太鼓芸能集団・鼓組(こぐみ)に入部した。篠笛を手に取り、唇にあてた。
「息を吹き込むと、すっきりした甲高い音が響いた。なんともいえない快感でした」
篠笛に熱中した。部活だけでなく、東京・練馬区の能楽・一噌(いっそう)流笛方、一噌幸弘さんに師事するようになった。一噌さんは能楽の古典だけではなく、バロックやジャズにも果敢に挑戦している。師匠の姿を見て感動したという。
「日本伝統の笛で、こんな演奏ができるんだ」
師匠の指導を受け、才能が一気に開花していく。「山田さんは高校の制服を着て、通ってきました。非常に勘のいい子で、どんどん上達していった」と、一噌さんは語る。
高校卒業を前に山田さんは決心した。「笛吹きとして生きていこう」。文化学院(東京)在学中、バリ島を訪れた。伝統音楽や循環呼吸法などを学んだ。帰国後、和太鼓や三味線などの邦楽奏者とユニットを組み、活動の幅を広げていく。イタリア、ハンガリー、ブルガリア、ポーランドなどで公演。3年前には若手邦楽奏者で構成するAUNJクラシック・オーケストラの一員としてフランスの世界遺産、モン・サン=ミシェルで公演を果たした。
「神秘的で、神聖な修道院。訪れた瞬間、涙があふれてきました」
今月(11月)20日からカナダ公演に出かける。世界を舞台に活躍しているが、地元の月見の会や元銭湯を会場にしたコンサートにも出演している。
「はい。習志野は、わたしを育ててくれた大切な街ですから」(塩塚保/SANKEI EXPRESS)