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張成沢氏の全職務解任 北朝鮮 正恩体制への権力継承「仕上げ」

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張成沢氏の全職務解任 北朝鮮 正恩体制への権力継承「仕上げ」

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金正恩(キム・ジョンウン)氏と張成沢氏(チャン・ソンテク)との関係=2013年12月9日、※敬称略。写真は聯合ニュースなど  北朝鮮の事実上のナンバー2とされた張成沢(チャン・ソンテク)国防委員会副委員長(67)が全ての職務から解任され、失脚した。朝鮮労働党は張氏を「除去」したとしており、これまで失脚と復活を繰り返してきた張氏だが、今回は「再起不能」の状態に置かれたといえる。

 北朝鮮メディアによると、「最近、党内に潜んでいた異色分子が分派活動により自らの勢力を拡張し、党に挑戦する事件」が発生、12月8日に開かれた党政治局拡大会議で「張成沢が行った反党・反革命的分派行為、反動性がことごとく暴露された」という。

 また張氏は、「周囲に迎合分子を引き寄せ、党内に分派を形成するため悪辣(あくらつ)に行動し、地盤を築こうと画策した」「朝鮮人民軍最高司令官(金正恩(キム・ジョンウン)第1書記)の命令に従わないという反革命的な行為を敢行した」と断罪。金銭や女性関係、賭博などでの不正・腐敗も解任理由という。

 北朝鮮メディアが、失脚した高官の連行写真を公開するのは異例。見せしめ効果を狙ったものとみられている。

 張氏は金正日(ジョンイル)総書記の妹、金敬姫(キム・ギョンヒ)氏(67)の夫で、党を中心に活動。2010年に国防副委員長に就任した。中国や韓国を訪問したこともあり、北朝鮮首脳部では数少ない「外部を知る人物」とみられていた。11年12月の金正日総書記の死去後は金敬姫氏とともに、金第1書記への権力移行に努めてきたといわれる。(SANKEI EXPRESS

 ≪北朝鮮 正恩体制への権力継承「仕上げ」≫

 北朝鮮の金正恩第1書記の叔父、張成沢(チャン・ソンテク)国防副委員長が解任され失脚したことで、金正日総書記の死去から約2年を経て、金正恩体制への権力継承は仕上がったもようだ。朝鮮労働党や朝鮮人民軍での大幅な世代交代もあったと見る韓国政府では、北朝鮮の体制と政策の変化に注目している。

 張氏は2011年12月の金正日総書記の死去後、おいである金第1書記の「後見人」的な存在として、体制移行で中心的な役割を担ってきたとされる。

 解任に際し、北朝鮮当局は金日成(イルソン)主席の娘婿の張氏を、金日成・正日・正恩一族の“外様”とみなしている。朝鮮中央テレビは12月9日、解任を決めた会議の場で拘束、連行される張氏の姿を放映。高位級人物のこうした画像が公開されたのは1970年代以来という。

 韓国の康仁徳(カン・インドク)元統一相は「金第1書記と張氏の権力闘争だ。最も力を持っているのは、金第1書記ではないか」と分析。また、ソウルの外交当局者は「権力維持へ張氏排除が必要と判断した金第1書記の明確な意思を感じる」と指摘する。

 混乱の可能性についてソウルの外交当局者は「体制のぐらつきよりも、むしろ強さを示すのではないか」と権力集中が進むと見通した。経済改革については「経済の改善以外に道はない。別の人物を担当にし改革を進めるだろう」とした。

 2年前の金総書記の告別式では、金第1書記のほか最高幹部7人の幹部がひつぎを乗せた車を囲んだ。そのうち李英浩(リ・ヨンホ)軍総参謀長、金永春(ヨンチュン)人民武力部長、金正覚(ジョンガク)軍総政治局第1副局長(肩書はいずれも当時)ら軍幹部4人はすでに解任されるなどで一線から退き、今回、張氏も失脚した。残っているのは金己男(ギナム)党書記ら80代の高齢者2人だけ。韓国政府は、金正恩体制で党や軍などの幹部の44%に当たる97人が交代したと分析、大幅な世代交代が進んでいることに注目している。

 康元統一相は「簡単に政策は変えられない。核開発を進める一方で、混乱もあろうが、情報技術(IT)に精通した若い世代の登場で国内の生産管理方式の改善などを進める可能性もある」と指摘する。

 韓国統一省報道官は9日、北朝鮮の権力や国内状況、対外動向を注視していく考えを示している。(ソウル 名村隆寛、加藤達也/SANKEI EXPRESS

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