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社会
いじめ認知2.8倍 最多19万8108件 認識、各県で隔たり 「格差」80倍以上
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2012年度に全国の小・中・高校と特別支援学校で認知されたいじめの件数は19万8108件で、前年度の2.8倍に上り過去最高だったことが、12月10日発表された文部科学省の問題行動調査で分かった。とくに、東日本大震災で被害の大きかった岩手、宮城、福島の被災3県では前年の4~6倍になり、児童生徒のストレスが依然として高い実態がうかがえた。
調査結果によると、12年度のいじめ認知件数は小学校で11万7383件(前年度3万3124人)▽中学校6万3634人(前年度3万749人)▽高校1万6274人(前年度6020件)-で、小学校では4倍近くも増加した。
2011年10月に起きた大津市の中2男子自殺事件により、学校や保護者の問題意識が高まったことから、潜在的ないじめが掘り起こされたとみられる。一方、「これまでの認知に不十分な点があった」(文科省児童生徒課)ことも否めず、文科省では各教育委員会に対し、早期発見に一層努めるよう求めている。
具体的な内容では、複数回答で「冷やかしやからかい」が6割以上、「無視や仲間はずれ」が2割前後を占める一方、「金品を盗んだりする」「恥ずかしいことや危険なことをさせられる」など重い事例もそれぞれ1割前後あった。
被災3県では、岩手のいじめ認知件数が前年度の6.9倍、宮城が6.2倍、福島が4.7倍といずれも全国平均(2.8倍)より高く、文科省では「震災と直接の因果関係があるかは不明だが、生徒児童のストレスが高いのは事実」としている。
いじめの認知件数をめぐっては、いじめ自殺が社会問題化するたびに急増し、その後減少していく傾向が繰り返されており、継続的な取り組みが求められる。
≪認識、各県で隔たり 「格差」80倍以上≫
12月10日発表した問題行動調査では、都道府県によっていじめの認識が大きく異なる実態が改めて浮き彫りになった。冷やかしなど軽微な事案をいじめに含めるかどうかで各県の判断は分かれており、文科省では「認識にばらつきが出ないよう、調査方法のあり方を検討したい」としている。
2012年度の調査結果によると、1000人当たりのいじめの認知件数は全国平均14.3人で、前年度(5.0人)の約3倍。最大は鹿児島の166.1人で、最少の佐賀(2.0人)の80倍以上に上った。
鹿児島では、大津市の中2自殺事件を受けて昨年実施された12年度上半期(4~9月)の緊急調査を機にアンケートの内容を改め、いじめの具体例を並べてチェックさせるなど回答しやすくした。これが認知件数の大幅増につながったとみられ、鹿児島県教委の担当者は「いじめの早期発見こそ良い学校の証しと考え、児童生徒が軽微な事案でも訴えやすい環境をつくっている」と話す。
一方、佐賀では「いじめかどうかは、教師が責任をもって判断すべき」(県教委学校教育課)という立場だ。今回調査の認知件数は207件と全国最少だが、前年より3倍も増えており、「児童生徒には毎月1回、生活アンケートという形で心の悩みなどを聞いている。何でもいじめに含めてしまえば、深刻ないじめに重点的に対処できなくなる恐れもある」(県教委学校教育課)。
関東各県でもばらつきがみられた。07年に県内の小中学生を集めて「いじめサミット」を開催したことのある千葉では、以前から子供目線でいじめを認知しており、1000人当たりの件数は32.2件に上った。これに対し埼玉は4.5件で、県教委生徒指導課では「一つ一つの事案にきめ細かく対応しており、いじめなどの解消率では全国平均を大きく上回っている」と強調する。
≪地域住民とスクラム 防止策探る≫
いじめ認知件数が過去最多となる中、地域の力を活用していじめの未然防止に取り組む自治体も出てきた。千葉県市川市では研修を受けた地域住民が小中学校で子供たちといじめについて議論する事業をスタート。専門家は「学校と地域の交流は、子供たちにとって相談できる大人を増やすことにつながる」と話している。
市川市立大洲中学校の道徳の授業。生徒が3、4人ずつ、7つの班に分かれて座る傍らに、地域の大人たちが寄り添う。市民による学校支援事業の一環だ。この日の授業で扱われたのは、1986年に東京都中野区で中2男子が「葬式ごっこ」などのいじめを苦に自殺し、大きな社会問題となった事件。生徒たちは担任の教師から事件の概要を聞いた後、「なぜ自殺を防げなかったのか」をテーマに議論した。
「もしみんなが同じ立場だったら、先生にちゃんと話せる?」
口の重い生徒たちの思考を促すように、参加者の市沢由江さん(64)が優しく話しかけていた。
今年度から始まったこの事業は、市内の民生委員ら約40人が参加。子供たちとのやりとりを想定した演習など複数回の研修を受けてから、実際の授業に臨んでいる。「何かを教えるというのではなく、子供たちの話を丁寧に聴き、意見を引き出すように努めてもらっている」(市教委生涯学習課)
10月に文科省が策定した「いじめ防止基本方針」の中にも、いじめ問題を地域ぐるみで解決する仕組み作りが盛り込まれるなど、地域住民に課された役割は小さくない。いじめ問題に取り組むNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」の武田さち子さんは「地域住民との交流を通じて、子供たちも困ったことがあれば相談しようとか、注意されても耳を傾けようという気持ちになるのではないか」と話している。(SANKEI EXPRESS)