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社会
訪日外国人1000万人 忍者PRやロケ誘致、地方活性化に直結
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政府観光局は12月11日、1~11月に日本を訪れた外国人旅行者が推計で949万9300人となったと発表した。2013年は、初めて年間1000万人を突破、政府目標を達成する見通しとなった。政府は観光を成長戦略の柱の一つと位置付けており、20年の東京五輪開催などを弾みに訪日客をさらに増やすための態勢づくりを急ぐ。
円安で日本への旅行に割安感が出てきたことや、7月に始まったタイ、マレーシアに対する観光ビザの免除が後押しした。
尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐる関係悪化の影響で、昨年10月から前年同月比マイナスが続いていた中国が、今年9月からプラスに回復し、3カ月連続で過去最高を記録したことも一因となった。
韓国は、東京電力福島第1原発の汚染水問題への不安から10、11月と減少したが、最近は警戒感が和らいでいるという。
観光庁の久保成人長官は11日の記者会見で「12月も去年より多いペースだ」と述べ、目標達成に自信を見せた。
1000万人は当初、10年達成が目標だった。しかしリーマン・ショックがブレーキとなり、東日本大震災が発生した11年は約620万人にまで落ち込んだ。
政府は、30年に外国人旅行者を3000万人超とする長期目標を立てており、受け入れ態勢の強化策として、観光地などの案内標識の多言語化やビザ緩和の対象拡大などを進めている。羽田、成田両空港の発着枠拡大も検討中だ。
国・地域別の11月までの累計は、韓国が227万人で1位、次いで台湾が206万人、中国が122万人だった。11月単独は全体で前年同月比29.5%増の83万9800人で、11月として過去最高となった。
日本を訪れる外国人旅行者の年間1000万人突破が目前となった。外国人客を取り込み地域経済活性化の目玉にしようと、東京や京都といった主要観光地以外でも、地方自治体などが独自の集客策を展開する。その取り組みは、忍者やロリータファッションといったマニアックな日本文化をアピールしたり、映画のロケを誘致したりするなど多彩だ。
三重県伊賀市の伊賀流忍者博物館を訪れる外国人は、2004年度の約3600人から12年度は1万人を超えた。来場者は、手裏剣を投げ、鎖鎌を振り回す「伊賀忍者特殊軍団阿修羅」の実演ショーを楽しみ、貸衣装で忍者の姿になって、城の石垣で記念写真を撮る。
外国人増加の理由は、阿修羅の海外PR活動だ。06年以降、台湾、韓国、米国などで公演を実施。今年7月、パリで開催された「ジャパンエキスポ」に出演した際には約4万人が集まった。博物館を運営する伊賀上野観光協会の森本聡志さんは「アニメやゲームを通じ忍者への憧れは強く、世界に通用する」と強調する。
北海道では、レースやフリルをあしらったロリータファッションで記念撮影するスポットとして、道庁の赤れんが庁舎や小樽運河など異国情緒のある歴史的建物の人気が高まっている。アジアや欧州でも日本の「カワイイ」文化は関心が高く、外国人の姿も増えているという。
札幌、小樽両市などは推進協議会を設置し、道産食材で作ったスイーツを味わう「お茶会」やファッションショーを開催、集客増を図っている。協議会の担当者は「北海道は食と風景というイメージが強いが、実はサブカルチャーもある。ツアーを組むなど、積極的に外国人観光客獲得に取り組みたい」と意気込む。
海外の映画やテレビドラマの舞台となった場所に観光客を呼び込む「スクリーンツーリズム」も広がっている。これまでも北海道を舞台とした中国映画や秋田県で撮影された韓国ドラマのヒットで、ロケ地の観光客が急増した実績がある。
富山県は今年4月、インドのラブコメディー映画のロケを誘致。主人公が空想の中で、五箇山の合掌造りや立山を背景に恋する女性とダンスをした。映画は6月に3週連続で1位になった。インドは世界有数の映画大国で、ヒット作は消費活動にも強い影響を及ぼす。富山県はインドからの観光客増に期待。民間企業と協力し、現地にポスターを張ってPR、ツアーも検討中だ。
政府の試算では、30年に外国人旅行者を年3000万人超とする長期目標を達成すれば、日本で使われるお金は4.7兆円で10年時点の3倍以上になる。
日本総合研究所の矢ケ崎紀子上席主任研究員は「地方にとって外国人客誘致は、経済活性化に直結するやりがいのある挑戦だ。忍者や雪など、日本人が当たり前だと思っている魅力を冷静に分析することが必要だ」と話す。(SANKEI EXPRESS)