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車に隠れながら撮影指示 映画「少女は自転車に乗って」 ハイファ・アル=マンスール監督インタビュー

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車に隠れながら撮影指示 映画「少女は自転車に乗って」 ハイファ・アル=マンスール監督インタビュー

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「主人公は男の子みたいに元気で駆け引きが上手な姪っ子なんですよ」と語るハイファ・アル=マンスール監督=2013年11月7日、東京都千代田区(高橋天地撮影)  イスラム教の戒律が厳しいサウジアラビアでは、ちょっとおてんばな女性が車でも運転しようものなら、その是非をめぐってかんかんがくがくの議論が起こり、“興味深い”ニュースとして世界へ配信されてしまう。そんなお国柄では映画館の設置も法的に認められておらず、長編映画がすべて国内で撮影されたのも「少女は自転車にのって」が初めてとなる。

 本作を手がけたのはこれまた国内初の女性監督となるハイファ・アル=マンスール(39)。前述の自動車を自転車に置き換えて「女性が抱く自由への渇望を行間からにじませるメタファーとしました」と話し、日々の暮らしで伝統文化の制約を受けながらも、大切にもしたい女性の矜持(きょうじ)と、どう付き合うべきなのかと問題提起してみせた。

 インターネットで価値観変化

 10歳のおてんば少女、ワジダ(ワアド・ムハンマド)は幼なじみの少年と自転車競走がしたくてたまらないが、母は大反対。ある日、学校でコーランの暗唱コンテストが開催されることになり、ワジダはその賞金で自転車を買おうと必死に暗唱に取り組むが…。

 女性と男性が路上で一緒にいることすらはばかられるこの国の社会で、撮影することはさぞ難儀だったに違いない。マンスール監督は「基本的に女性と男性は“隔離”されているんです。だから私は路上撮影では近くに止めたバンの中に隠れて、モニターを見ながら無線で『今の気持ちをキープして』『もっと画面をワイドに撮って』と俳優やスタッフに指示していたんですよ」と明かし、フラストレーションのたまった日々を振り返り渋い表情を浮かべた。

 室内であっても1対1で男性記者の取材を受けたとなれば、どんな後ろ指を指されるか分かったものではないし、血縁ではない若い男女が外でデートすることなど絶対にあり得ないことで、そんなことをすれば「宗教警察が飛んできて罰せられてしまいますよ」と、マンスール監督は目を丸くした。

 ただ、中東で吹き荒れた「アラブの春」でも一役買ったインターネットの存在が、サウジアラビアに少しずつ価値観の変化をもたらすのではないかとも思う。「たとえば若いカップルの間ではスカイプが男女の恋愛の大切なツールとされています。インターネットが社会に与える力はすごい。もちろん私も伝統文化を大切にしてはいますが、インターネットがどんな影響を与えるのか、興味深く見守っています」。公開中。(高橋天地(たかくに)、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■Haifaa al-Mansour 1974年8月10日、サウジアラビア生まれ。97年にカイロ・アメリカン大を卒業後、帰国後の8年間に3本の短編映画を作る。2005年に初のドキュメンタリー「Woman without shadows」の上映時に米外交官の現在の夫に出会う。その後、豪州のシドニー大で映画学を学ぶ。現在は夫と子供2人とバーレーンに住む。

 ※映画紹介写真にアプリ【かざすンAR】をインストールしたスマホをかざすと、関連する動画を視聴できます(本日の内容は6日間有効です<12月25日まで>)。アプリは「App Store」「Google Playストア」からダウンロードできます(無料)。サポートサイトはhttp://sankei.jp/cl/KazasunAR

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