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ナイトツアーで味わう上流気分 イギリス・ウィンザー城
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ウィンザー城(後方)につながる商店街は、クリスマスを前に王冠の飾りが取り付けられ、買い物客でにぎわっていた=2013年12月1日、英バークシャー州(内藤泰朗撮影)
エリザベス英女王(87)が昨年、即位60年を盛大に祝ったのに次ぎ、この夏には王位継承第3位のジョージ王子が誕生するなど、英王室には今年も実りの多い1年だった。その王室にとって「特別な場所」とされるのが、ロンドン郊外の離宮ウィンザー城だ。女王が週末を過ごす城を、夜にガイドの案内で巡る「ナイトツアー」が時々行われていることを聞きつけ、早速、参加してみた。
900年以上の英王室の歴史が凝縮された、世界最古にして最大級の現役の居城として知られるウィンザー城。夜のとばりが降り、観光客も去って静まりかえったビジターセンターの前に、身なりのしっかりとした年配の英国人カップルたちが集まった。東洋人の夫婦は私たちだけだった。
「皆さんはラッキーですよ。昨日、クリスマスの飾り付けをしたばかりですから…」
ガイドのモニカさんがこう言った後、「女王陛下は昨夜から城に滞在しておられます」と付け加えると、ツアー参加者たちはみな笑顔になった。
王宮のラウンドタワーを凝視すると、暗闇の中にライトアップされた王室旗がはためいていた。女王が城に滞在中は王室旗が、不在のときは英国旗が掲げられるのだという。
しかし、城に入る直前、内部の写真撮影はダメだと告げられた。クリスマスの飾り付けを撮影できると、期待に胸を膨らませていただけにちょっとがっかりさせられた。
だが、ツアーの名称は「ビハインド・ザ・ロープス(ロープが張られた向こう側)」。普段はロープが張ってあり、入れない場所にも行けるというのが“売り”である。
約2時間半のツアーでは、現在も王室の公式行事に使われているステートアパートメント(公式諸間)のふかふかの絨毯の上を自由に歩いたり、ピカピカに磨き上げた食卓を触ったりと、日中の一般公開とは大違い。参加者の中には、ビクトリア朝デザインのアンティーク(のようにみえる)椅子やソファの座り心地を確かめる人までいたのには驚いた。
王宮はそもそも、ロンドンを囲む砦のひとつとして建てられたのが始まりだっただけに、歴代の王たちが居城として改築や増築を重ねた後も「要塞」の風格を保ち続けている。
100人強のツアー客を2班に分けて巡ったが、静まりかえった夜の王宮には大英帝国の栄華とともに、帝国の亡霊を感じさせるような独特の雰囲気が漂っていた。
現在の英王室は「ウィンザー朝」と呼ばれる。これはドイツの流れをくむ王室が、第一次世界大戦でドイツが敵国となったため、国民の反感を恐れて「ウィンザー城」にちなんで英国風の名前に改称したのが始まりだ。女王の祖父ジョージ5世(1865~1936年)の時代のことだ。
「英王室の始まりとほぼ時期を同じくして建てられたウィンザー城は、王室の伝統が詰まった特別な場所なのです」。モニカさんはこう強調した。
だが、その城も1992年11月、大火災に見舞われた。女王は修復費用3700万ポンド(約63億円)を捻出するために、バッキンガム宮殿の一般公開を決断。ウィンザー城とともに入場料収益金が修復に当てられ、城は見事、再建された。
ただ、最近ではファッションショーやディナーパーティーなどのイベントに加え、人気テレビ番組の収録にも貸し出され、「年間800万ポンド(約13億6000万円)を稼ぎ、人件費や光熱費に充てられている」(英紙)。
ちなみにナイトツアー参加費は、通常入場料の3倍弱の1人50ポンド(約8500円)。商売がうまい英王室には脱帽した。
ツアーの最後にはシャンパンが用意されており、お城の土産物店で全商品20%割引という特典付きだ。
商売の精神に舌を巻いていたら、「あなたも、あのステートルームで上流階級のようなパーティーを開くことができるんですよ。いかがですか」と勧められた。
参りました!(ウィンザー 内藤泰朗、写真も/SANKEI EXPRESS)
ウィンザー城はロンドン西部にあり、市中心部からは車で約45分ほど。日帰りが可能だ。一般公開日や料金のほか、ナイト・ツアーの日程などについては以下のURLを参照。www.royalcollection.org.uk/visit/windsorcastle