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芥川賞・直木賞に3人の女性 姫野カオルコさんら
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Vサインで喜ぶ朝井まかてさん(右)と、ジャージ姿でひょうひょうとした雰囲気の姫野カオルコさん(左)。それぞれの個性があらわれた=2014年1月16日午後、東京都千代田区の帝国ホテル(鴨川一也撮影) 第150回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が1月16日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は小山田浩子さん(30)の「穴」(「新潮」9月号)に、直木賞は朝井まかてさん(54)の「恋歌(れんか)」(講談社)と姫野カオルコさん(55)の「昭和の犬」(幻冬舎)の2作に決まった。
贈呈式は2月中旬、東京都内で開かれる。賞金は各100万円。
≪朝井さん「力の及ぶ限り挑戦し続けたい」≫
初の候補で直木賞に輝いた朝井さんは1959年、大阪府生まれ。コピーライターから、49歳で小説家デビューした。江戸時代の植木職人を描いた処女作「実さえ花さえ」が2008年、初めて投稿した小説現代長編新人賞で奨励賞を受けた。そして、わずか6作目での直木賞受賞。「まさか、まさか。まだ作家と呼ばれることすらピンときていないのに…」
デビュー以来、江戸期の庶民の暮らしや人情を描写した時代小説を発表。受賞作は、水戸藩士に嫁ぎ、天狗(てんぐ)党の乱で投獄されながらも歌人となった中島歌子の生涯を通し、幕末から明治の動乱を描いて新境地を開いた。「尊皇攘夷、文明開化など激動の時代に、歴史に埋もれた人々に光を当てたかった」という。
小説を書きたい-。そんな思いを、子供のころからずっと抱いていた。1行書いては筆が進まず投げ出して、を繰り返した学生時代。卒業後はコピーライターとして広告制作会社に就職。家電や化粧品などのコピーを生み出す仕事にやりがいを感じ、「創作意欲が仕事で満たされて、小説は書くより読む方に夢中になっていた」と振り返る。
10年近く勤めた後、会社の後輩だった夫と制作会社を立ち上げて独立。クライアントにも恵まれ充実した日々の中、小説への思いが再び胸を占めるように。「このまま1作も書かなかったら、死ぬとき絶対後悔する」と、田辺聖子さんや玄月さんらを輩出した大阪文学学校の門をたたき、課題で書いた作品がデビューにつながった。
「遅咲きで筆も遅いし、途方に暮れることだらけですが、力の及ぶ限り挑戦し続けたい」。謙虚な言葉に、今後も伸び続ける才能がのぞいた。(横山由紀子/SANKEI EXPRESS)
芥川賞を受賞した小山田さんは広島市生まれ。広島大卒業後、編集プロダクション勤務などを経て、デビュー。初の候補で受賞を決めた。受賞作は、夫の転勤に伴い都会で忙しく働くOLから、高齢者の多い田舎町でのんびり過ごすことになった専業主婦の、ありふれた日常に現れる異界を描く。
姫野さんは滋賀県生まれ。画廊勤務を経て、1990年にデビュー。5度目の候補で栄冠を射止めた。受賞作は、奇異な性格の父母のあいだに生まれた少女の成長を飼い犬との思い出とともに描いた自伝的小説。直木賞の浅田次郎選考委員(62)は姫野さんの「昭和の犬」については「デビュー以来の個性を曲げず、すばらしいまとまり方をした」と絶賛した。(SANKEI EXPRESS)