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【軍事情勢】「弱兵・腐敗」と断じる 中国海軍の未熟な慣熟訓練

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【軍事情勢】「弱兵・腐敗」と断じる 中国海軍の未熟な慣熟訓練

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昨年11月6日、北京で軍幹部と握手を交わす習近平国家主席(党総書記)。この日、習氏は必ず勝利する強い軍隊の実現を呼び掛けたが、「弱兵」が中国軍に染みついた軍柄だ(新華社=共同)  国に「国柄」があるが如く、軍も「軍柄」を有す。政体が変わろうと、近代化が図られようと隠せない。文化・風土や民族性は畢竟、永い年月を掛け軍に染み付くためだ。中国人民解放軍の「軍柄」の一つは「弱兵」「腐敗」と断じられる。

 軍柄は「弱兵」「腐敗」

 人民解放軍の機関紙・解放軍報には自らの弱点を示唆する“重要機密”が時に潜む。ところが中国軍に自覚はない。むしろ自慢する。上から目線で偉そうに賢者を気取っても、どこか間が抜けている。2013年10月の軍報にも、伝統的かつ構造的な弱点を観る。中国海軍が掲載直前に実施した、2週間の慣熟訓練《機動五号》に関する、次の一文だ。

 《各艦に乗る政治工作班は小動員、小放送、小娯楽、小鼓舞等の小活動を実践し、将兵の敢闘精神を高揚しつつ、肉体・精神的ストレスを緩和した》

 例えば、《小動員/小鼓舞》は講話やきめ細かい指導で「やる気にさせる」教育手法。《小放送/小娯楽》とは艦内DJを流したり、実際の舞台を設営して、歌舞音曲を乗組員に楽しませるリクリエーションを指すようだ。軍政治部門による「文化工作」の一環とされる。

 ソ連の赤軍にも歌舞団が創設されており、中国軍はこの軍文化を受け継いだと思われる。ただ、台湾軍にも同種の軍機能があるので、清帝国軍など歴代王朝軍のDNAも混じっていると、小欄は感じている。

 海上自衛隊の場合、訓練期間が中国海軍の倍以上の1カ月、あるいは数カ月にわたる遠洋任務でさえ、洋上では《娯楽》が基本的にない。時間が許せば運動不足を補うべく、艦長の許可を受け甲板でジョギングやウェイト・トレーニングを行う《艦上体育》程度。そもそも、慣熟訓練は海上での《ストレス》に慣れることも目的の内だ。

 鍛えられる自衛隊と、幼児をあやすかのような中国軍。錬度と忍耐力の差は致命的だ。

 だが、兵器の量に加え質も向上する危機的状況の現出はそう遠くない。中国の公表軍事費は当初予算比で25年連続の二桁増。この間30倍以上に膨れ、わが国国防費の実質4~9倍強=20兆~45兆円との分析もある。

 米議会米中経済安全保障調査委員会が2013年11月に発表した報告によると、通常型と原子力の潜水艦は1995年にいずれも0%だった近代化率が、2010年には50%と33%、20年には75%と100%へと急増。駆逐艦とフリゲートも、1990年に共に0%だったはずが、2010年には50%と45%に上昇、20年にはどちらも85%に達する。

 一人っ子政策で軍紀低下

 一方で、精強性を支える尺度である、将兵のモラル=軍紀・軍律とモラール=士気の低下は酷さを増し続けている。

 原因の一つは《一人っ子政策》。爆発的人口増抑制に向け1979年に産児制限を強要し2008年、一人っ子は1億人を突破し人口の1割近くに迫った。その内「過保護に育てられ、わがまま・非協調性が目立つ」一人っ子が《小皇帝》。《私権抑制と高い協調性》が基本の軍に、小皇帝を含め一人っ子は10万人。20代~30代半ばの、前線における主力世代を占める。なるほど。洋上でのリクリエーションがなければ、訓練を乗り切れないというワケだ。

 「金持ちのバカ息子」にもリクリエーションが必要となった。1979年の中越戦争を最後に大規模な実戦はない。軍人として戦った世代が、中国共産党指導層で少なくなり、文民指導者は軍の支持を得ようと待遇改善を繰り返した。結果、軍は有力な就職先となる。企業や大学、官庁と人気は逆転したが、そうした人気組織の試験に落ちた若者の収容機関と化し依然人気は低くない。より良い配置に就こうと賄賂が横行。「裕福で頭が悪いお坊ちゃま」が、軍にドッと流入する事態を生んだ。

 一人っ子を溺愛する過保護な親も、高収入であれば兵役逃れのため袖の下を使う。

 しかし、受け入れる軍当局側の腐敗は、正規任務と勘違いしてしまうほどのスケールを描く。戦闘機360機のアルミ合金部分密売▽戦車と装甲車1800両が解体→密売▽地方の役人と結託し銃器27万3000丁を密売・密輸▽軍用地転売で20億元(337億円)の“副収入”を得た中将▽出入り業者から1億6000万元(27億円)の賄賂を受けた中将…。

 弱い割に残虐

 2012年12月には、たまりかねた習近平総書記(60)が「軍内の職権売買や汚職・腐敗」を批判し「このままで本当に戦争ができるのか」と糾弾。「東京を火の海にする」など好戦的暴言で呆れられる羅援少将も13年5月「開戦を待たずに負けてしまう」と、珍しく泣きを入れた。重要な中長期政策を検討する第18期中央委員会第3回総会(13年11月)では、軍の腐敗撲滅運動を宣言した。

 儒教書の《論語》にはじまり、歴史小説の《水滸伝》《三国志演義》でも腐敗は強い憤怒の対象だった。裏返せば、腐敗は中国歴代王朝→共産党が熟成・発酵させてきた伝統・文化。腐臭は「軍柄」に宿痾として取り憑き、除染は絶対不可能だ。

 第二次国共内戦(1946~49年)で、共産党は腐敗した国民党に嫌気が差した国民の支持で勝利する。その共産党率いる中国軍が、腐り果てて自滅する皮肉は大歓迎する。反日/対日戦鼓舞で、政官軍の引き締めを企む謀も迷惑至極ではあるが。

 ところで、中国軍とソ連赤軍の共通点を前述したが、《督戦隊》を加えたい。弱い割に残虐(弱い故に残虐?)な中国軍は督戦隊をもって自軍を後方より監視し、命令なしに逃亡・降伏する味方将兵を容赦なく射殺し、継戦を強制した。

 1937年の第二次上海事変や南京攻略戦でも大量殺戮を断行。トーチカを外から施錠し、塹壕内で将兵を鎖でつなぎ、志願兵でもない同胞に死を前提に戦わせた。

 軍紀・士気を保つための督戦隊投入は、今尚「弱さ」「腐敗」を「軍柄」とする中国軍文化を考慮すると可能性として残る。そうであれば、わが国島嶼部への中国軍上陸部隊に対し、自衛隊が緒戦で後方の督戦隊を撃破、逃走水面・逃走路を開ければ中国兵の大量逃亡を誘発できる。ただし、潰走する敗残兵が軍服を脱ぎ、私服=便衣に着替える余裕を与えてはならぬ。

 「中国人民を大虐殺した」と、又ぞろ歴史に捏造の一頁を加える《世論戦》への毒牙を摘み取っておくのだ。(政治部専門委員 野口裕之)

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