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サンフランシスコ「住宅戦争」 IT技術者流入で家賃高騰 日本総領事館も移転
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米カリフォルニア州サンフランシスコで、アパートやマンションが軒を連ねる通りを歩く女性。家賃高騰によって、高額所得者以外が“霧の都”に住むには、シェアかウサギ小屋しかなくなりつつある=2014年3月17日(AP) 米西海岸のカリフォルニア州サンフランシスコで、「住宅戦争」が勃発している。アップルやグーグルなど数々の有力企業を育んできた米IT企業の集積地、シリコンバレーで働く高収入のIT技術者の流入によって、家賃の高騰が深刻化しているからだ。家賃を上げてもすぐに次の入居者が見つかるため、昔からの借家人が立ち退きを迫られるケースが相次ぎ、在サンフランシスコ日本総領事館も先月(3月)下旬、契約切れを機により狭いオフィスへの引っ越しを余儀なくされた。こうした家賃高騰は他の米主要都市でも起きており、住居の「ウサギ小屋」化も急速に進んでいる。
IT技術者らが職場から40~80キロ離れたサンフランシスコでの居住を好むのは、都市生活を楽しめるからだ。シリコンバレーは夜9時を過ぎると閑散とするため、盛り場が恋しい技術者にとっては住むのに適さない。このため、インターネット検索大手グーグルなどは通勤の足として、サンフランシスコなどから従業員用のシャトルバスを走らせている。
地元メディアによると、サンフランシスコの家賃は2013年に11年と比べ3割程度上昇、中心部は5割近くも上がり「家賃爆発」の状態だ。アパートの平均家賃は「ワンバスルーム(日本でいう1LDK)」で1カ月約2800ドル(約28万円)、「ツーベッドルーム(2LDK)」が約4000ドル(約41万円)。約90平方メートルの平均的な住宅(寝室2つ)の購入価格は50万ドル(約5100万円)以上、場所によっては100万ドル(約1億200万円)を超える。
共同通信によると、海岸近くのアパートを約20年借りていた大工、長谷川兼司さん(64)は昨秋、家主から立ち退きを切り出された。現在の家賃は1100ドル(約11万円)だが、近所で同じ広さの物件を借りようとすると今は約3000ドル(約30万円)になる。「お金には勝てない」とサンフランシスコを出ることを決めた。
家賃高騰や交通渋滞の悪化を受け、IT企業や社員らを非難する市民の抗議行動が相次ぎ、昨年(2013年)12月にはグーグルが走らせている通勤バスを住民が取り囲み、「住居を奪うな」「出て行け」などとシュプレヒコールを上げる“事件”も起きた。このためサンフランシスコ市当局は、今年に入ってグーグルなどの従業員用バスの停留所使用を有料化。20年までに、手頃な価格帯も含めた住宅3万戸の建設を目標に掲げた。
だが、グーグルやアップルは社屋の拡大を計画しており、住宅供給が全く追いついていない現状では、家賃や住宅価格の高騰が当面続くのは必至だ。
サンフランシスコとは背景がやや異なるが、家賃の急激な高騰は、経済的に疲弊した地方から大量の求職者が流入している米国の他の主要都市でも起きている。最近では、「マイクロアパート」なる新語も登場し、日本ではワンルームに当たる20~25平方メートルの超狭いアパートの建設が大都市で進んでいる。
こうした事情を反映し、ニューヨークでは近く、マイクロアパートのデザインコンテストが行われる予定で、西海岸のシアトルでは市当局が急遽(きゅうきょ)、48棟(約2300室)のマイクロアパートの建設許可を出した。
かつて米国は、日本の狭い住宅事情を「ウサギ小屋」などと揶揄(やゆ)したが、急速に進む都市化の波の中で、米国でもウサギ小屋が標準化されようとしている。(SANKEI EXPRESS)