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【まぜこぜエクスプレス】Vol.7 知ることで広がる自然な配慮 アスペルガー症候群を優しく解説
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「なにがちがうの?_アスペルガー症候群の子の見え方・感じ方」(ミネルヴァ書房)を子供たちと一緒に読む、一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづるさん=2014年5月10日(山下元気撮影) コミュニケーションにハンディキャップを持つといわれるアスペルガー症候群。だが、アスペルガーの人がどんな困難を抱えているのか想像することは難しい。アスペルガーの子供の視点から、どんなことに困っているのかなどをわかりやすく解説してくれる『なにがちがうの? アスペルガー症候群の子の見え方・感じ方』(ミネルヴァ書房 監修:内山登紀夫 編:尾崎ミオ 1800円+税)が刊行された。一般社団法人Get in touch理事長、東ちづるがたくさんの人に読んでもらいたいと薦める一冊だ。
≪生まれつきの脳の特性≫
ハンス・アスペルガーという医師の名に由来するアスペルガー症候群は、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」と総称されることもある。スペクトラムは「連続体」という意味で、同じ特徴がつながっていることを指す。アスペルガーは自閉症スペクトラムのうち知的な遅れを伴わなかったり、目立たなかったりするものを示すことが多い。
特徴はおおむね3歳までに表れる。もちろん専門医が判断する。その子供が持つ生まれつきの脳の特性とされるが、外見からはわかりにくいため、本人や家族が苦悩しているケースが少なくない。
一般的には、「こだわりが強い」「空気を読むのが苦手」「自分の身体をコントロールしにくい」といった特徴がある。ところが、それを説明しても、「そんな子たくさんいるわよ~」「いつか治るわよ」と軽くあしらわれたり、「親のしつけができていない」と、親の責任を追及してくる人もいる。
私はよく自虐的な冗談を言う。笑いをとり、その場を盛り上げるためだ。ある時、アスペルガーの友人が、「そんなふうに自分を卑下することはありません。みんなも笑っては失礼です」と言った。
私は「なんて優しいの!」と癒やされた気持ちになったが、アスペルガーについて知らず、「場がしらけた!」と不愉快になる人もいるようだ。
「空気が読めない」と、職場や学校でいじめにあうアスペルガーの人も少なくないという。こんな話も聞いた。友人の祖母のお葬式。率直過ぎる友人の息子は「次はおじいちゃんだね」と。おじいちゃんも親戚も彼には悪気なんてないと知っているので、怒り出すことはない。
この“知っている”ということがとても大切なのだろう。詳しくなくても、なんとなくでいいから、知ってほしい。
アスペルガーの青年を描いたスウェーデン映画『シンプル・シモン』(ユーロスペース渋谷などで順次公開中)で、主人公のシモンは胸に「ボクはアスペルガーです」とデザインされた缶バッジをいつも付けている。すると初対面の人も配慮してくれるのだ。そう、遠慮ではなく配慮を。
『アスペルガーの子の見え方・感じ方』では、アスペルガーの子供が直面する小学校でのよくあるトラブルについて、本人がどう感じているのかをイラストで紹介している。本人たちが語ったエピソードを参考に構成されており、彼らの認知の特性や感覚を理解しやすいように工夫されている。周りからは、勝手でわがままにみえる行動にも、ちゃんと理由があるのだ。“ちがい”は困ったことや大変なことではなく、ユニークなことだと優しく教えてくれる本だ。配慮が日常的に当たり前のことになれば、笑顔も広がるはずだ。(一般社団法人「Get in touch」理事長 東ちづる/フォトグラファー 山下元気/SANKEI EXPRESS)