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38回も札束で殴られ、沸々と… 映画「罪の手ざわり」 チャオ・タオさんインタビュー

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38回も札束で殴られ、沸々と… 映画「罪の手ざわり」 チャオ・タオさんインタビュー

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「中国社会の急激な変化に犠牲を強いられた人々もいる。そんな人々に光を当てた作品です」と語る、女優のチャオ・タオさん=2014年4月2日、東京都渋谷区(高橋天地撮影)  リアルな中国の姿を映像で浮き彫りにしてきたジャ・ジャンクー監督(44)が7年ぶりに手がけた長編ドラマで、昨年(2013年)の第66回カンヌ国際映画祭では最優秀脚本賞を手にした「罪の手ざわり」が日本で劇場公開される。中国では一般公開のめどが立たない中、3月には作品がネット上に流出し、無料ダウンロードできる状態となった不可解な事件も報道され、作品をめぐる“場外乱闘”も話題となったのは記憶に新しい。

 急激な変化の中で

 ジャ監督の妻で、本作の主演を務めたチャオ・タオ(37)は4月にプロモーションで来日し、SANKEI EXPRESSの取材に「中国の社会問題を鋭く活写する主人の姿勢は変わっていません。この作品では、中国人がなぜ暴力に足を踏み入れなければならなくなったのか、それぞれ登場人物の境遇が描かれています。それこそ作品の力ですし、カンヌ国際映画祭をはじめとした世界の舞台で高い評価を得ているのではないかと考えています」と胸を張った。

 高度経済成長の結果、急激に変化していく街並みや、時代に取り残され疲弊してしまった人々の姿が、実際に起きた4つの事件をモチーフに描かれいる。村長の汚職事件に怒り狂う山西省の男(チャン・ウー)、銀行強盗を重ねる重慶の男(ワン・バオチャン)、既婚男性とのかなわぬ恋に夢中となり、風俗サウナの受付嬢として年を重ねていく湖北省の女(チャオ)、親からの仕送りの催促に追い詰められる広東省の青年(ルオ・ランシャン)-。登場人物はそれぞれ微妙に絡み合い、社会の底辺に巣くう暴力という名の狂気をあぶり出していく。

 屈辱におののく

 チャオが扮するシャオユーを自分のものとするために極限の演技が要求されたそうだ。「シャオユーが作品の中で登場するのは、わずか3日間の出来事の中でのことでした。私はその短期間に、ごく平凡な女性が、人に暴力を振るい振るわれる場面へと足を踏み入れ、屈辱におののくまで、急激に感情の変化をつけていかなければなりませんでした」。シャオユーはくみしにくい人物だったのだ。さらに、最初と最後の登場場面の撮影インターバルが諸事情で3カ月もあいたことで、シャオユーになるべく再び気分を盛り上げるのに手間取ったという。

 男性から暴力を振るわれる場面を体験したことで、自分の中で新たな感情が開発されたことは女優として得難い経験となった。「38回も札束で殴られました。リアル感を出そうと手加減なしで臨みました。女性の屈辱感はこうやって沸々とわき起こってくるんだなあと、思えたのです」。5月31日から全国順次公開。(高橋天地(たかくに)、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■Zhao Tao(趙涛) 1977年1月28日、山西省生まれ。北京舞踏学院の民族舞踊科を卒業。2000年の主演作「プラットホーム」(ジャ・ジャンクー監督)で女優デビュー。その後、ジャ監督の02年「青の稲妻」、04年「世界」、06年「長江哀歌」、08年「四川のうた」でそれぞれ主演。11年に伊映画「ある海辺の詩人~小さなヴェニスで~」に主演し、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞(伊アカデミー賞)の主演女優賞を受賞した。

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