人気の理由は、ＣＤのように帯域制限のないアナログが、懐古的な意味ではなく良い音であることが、若者に広まってきたから。すでにアメリカでは音楽のデジタル配信販売が２０１３年に前年実績を割り込む現象も起きている。

　そんな中、ビートルズのアナログ復刻盤ボックス・セット「ＭＯＮＯ　ＬＰ　ＢＯＸ」が世界発売され、日本盤も１０日に発売された。ビートルズは現在、ステレオ版で聴かれているが、１９６０年代にはモノラル版に力を入れていた。また初版、第二版と音が変化していき、事情通にはその初版の音が圧倒的に良いといわれてきた。

　今回、レコード盤を制作したのは、イギリスの初版を聴きこんだエンジニア。実際に今回発売の盤を聴いてみると、曲によっては知っている曲のイメージと全く異なる、インパクトの強い音像となっている。

　デジタルの均一な音像に慣れている現代人には、揺れの多いアナログ媒体が、かつてプレスによって異なったことは驚きだろう。デジタルにない、アナログ技術の奥の深さに気づく人が増え、さらにブームに拍車がかかりそうだ。解散後４４年、ビートルズはいまなお、ポップ音楽の前線を走っている。（アーティスト・作詞家　サエキけんぞう／ＳＡＮＫＥＩ　ＥＸＰＲＥＳＳ）