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「中国人は文明的旅行者たれ」機内トラブル続発、マナー向上に躍起
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外遊で中国政府専用機に乗り込む習近平国家主席と彭麗媛夫人。「文明的旅行者であることは国民の義務」と習主席は呼びかけているが、中国人旅行者が騒ぎを起こすのは、まだ日常茶飯事だ=2014年11月19日、オーストラリア・シドニー(ロイター) 旅客機内のトラブルといえば、最近では韓国・大韓航空の「ナッツ・リターン事件」が世界中のメディアをにぎわしたが、その陰で、中国人乗客が絡むトラブルも相次いでいる。この2週間だけでも少なくとも4件起きており、中国国内では「国の恥だ」「厳しく罰すべきだ」などといった声が上がり、大きな反響を呼んでいる。世界各国で中国人旅行者が急増する中、習近平国家主席(61)は常々、中国を大国にふさわしい一流国家にするには「文明的な旅行者」を育てなくてはならないと説き、国家観光局もマナー向上に躍起になっているが、ルール(常識)に慣れるには、まだ時間がかかりそうだ。
■CAに熱湯浴びせる
中国メディアなどによると、4件のうち特に問題となったのが、11日にタイ・バンコク発中国・南京行きの格安航空エア・アジア機内(乗客・乗員180人)で起きた「カップ麺事件」だ。乗客の若い中国人カップルの女性が離陸直後、カップ麺用の熱湯を持ってきてほしいと客室乗務員に頼んだが、まだ機体が上昇中で傾いていたため、客室乗務員は水平飛行に入るまで待つよう求めた。すると、連れの男性が激怒。ナッツなどの食品類を通路に投げて踏みつけ、乗務員を怒鳴り散らした。
その後、客室乗務員が熱湯を持って来て60バーツ(約200円)の料金を請求すると、再び口論となり、女性が客室乗務員の背中に熱湯をぶちまけた。乗務員が謝罪を求めると、男性が逆上。「この飛行機を爆破して吹き飛ばしてやる」などと脅した。
このため、エア・アジア機はバンコクに引き返し、騒ぎを起こした男女はタイ当局に事情を聴かれ、5万バーツ(約18万円)を客室乗務員に支払うよう命じられた。さらに女性には200バーツ(約720円)、男性には100バーツ(約360円)の罰金が科せられ、2人は翌日、南京に帰国した。
■ネット拡散「恥さらし」
騒動の一部始終は、乗り合わせた中国人乗客がビデオ撮影しており、映像がネット上で流布すると、「恥さらしだ」「この程度の罰金では甘すぎる。中国当局も2人を犯罪者として調べ上げ、厳罰を科すべきだ」などといった書き込みが殺到した。
8日には、西安発の中国東方航空の国内便が海南島の空港に着陸すると、乗客の1人が非常扉を開け、脱出用シューターを広げるという騒動があった。早く旅客機から降りたいというのが動機だった。
14日にも、杭州の空港で離陸直前の厦(ア)門(モイ)航空便に乗っていた客が、新鮮な空気を取り入れようとして非常扉を開けてしまうトラブルがあった。乗客は飛行機に乗るのが生まれて初めてだったという。
4件目は17日、重慶発香港行きの中国国際航空機内で起きた。前後に座った乗客同士数人が「赤ん坊の泣き声がうるさい」「座席をリクライニングさせるな」などと言い合いになり、殴り合いの大げんかに発展した。騒動で旅客機は引き返す寸前になり、香港の空港に着陸すると、通報を受けた警察官が機内に乗り込む事態となった。この一件でも、乗り合わせた客がけんかの様子を写真撮影し、「高度7500メートルの大げんか」として中国版ツイッターの「微博(ウェイボ)」に投稿したため、大きな話題となっている。
■ブラックリスト入り
「カップ麺事件」については、中国国家観光局は「中国人民の全体的なイメージを大きく損なった」とする声明を発表。地元当局に捜査を指示するとともに、渦中の2人を旅行先で問題を起こした人物の「黒名単(ブラックリスト)」に入れた。今後、再出国時の審査をより厳格に行うという。
国家観光局が策定した旅先での常識的禁止事項を列挙したガイドラインの冒頭には、「文明的旅行者であることは、国民一人一人に課せられた義務である」と記されている。