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地下鉄で出産、警官活躍に拍手 「神の恵み」米にクリスマスベビー
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地下鉄車内で生まれたばかりの赤ちゃんを抱き抱えるダニエル・キャバン巡査部長=2014年12月25日、米ペンシルベニア州フィラデルフィア(南東ペンシルベニア交通局の監視ビデオから、AP) 米東部のペンシルベニア州フィラデルフィアの地下鉄車内で25日、乗客の女性が急に産気づき、そのまま出産するという“ハプニング”があった。
出産に立ち会ったのは急報を受けて駆けつけた警察官2人で、その手際の良さに拍手と称賛の声が上がっている。米国ではこのところ、警察官が絡む暴力の連鎖が続き、警察と市民の対立が強まっていたが、「クリスマスベビー」誕生は久しぶりの明るいニュースとして、米メディアでも大きく取り上げられた。
米紙フィラデルフィア・インクワイアラーなどによると、クリスマスベビーが誕生したのは、フィラデルフィア市内を東西に貫く地下鉄マーケット・フランクフォード線の車内。25日午後5時半ごろ、乗客の女性が急に苦しみだした。
女性は片言の英語しかしゃべれなかったが、「マイ・ウオーター・ブローク(破水)」と悶えながら連呼したため、出産直前と判断した乗客が車掌に連絡。車掌は救急医療隊と警察に通報した。
地下鉄は直近の15番街駅で停車、車内には南東ペンシルベニア交通警察の巡査部長のダニエル・キャバンさんとダレル・ジェームズさんが駆けつけた。2人は女性を運び出そうとしたが、すでに胎児の体の一部が出かかっており、搬出は困難と判断。
救急医療隊が到着するのを祈るような気持ちで待ちわびながらも、自分たちで胎児を取り出そうと腹をくくった。ジェームズさんは以前、妻の出産に立ち会ったことがあり、その時のことを思い出しながら、2人で力を合わせて処置に当たったという。
ベビーの誕生は救急医療隊が着く前の午後5時53分。キャバンさんは父親とみられる男性が脱いで差し出したセーターに赤ちゃんをくるみ、抱き抱えて車外に出た。キャバンさんは「クリスマス休暇中に生まれたこの赤ちゃんは、まさに神の恵みだ。クリスマスプレゼントの箱はもう前の日に開けてしまっていたが、予期せぬプレゼントとまた出会えるとはハッピーだ」とコメント。ジェームズさんも「早く救急隊員が来てくれること祈っていた。うれしい驚きだった」と興奮気味に話した。
母子ともに元気で、キャバンさんとジェームズさんは翌26日朝に病院で改めて母子と対面。この時の写真を南東ペンシルベニア交通局のトーマス・ネストル局長はツイッターに投稿し、2人の活躍ぶりを称賛した。
米国では、ミズーリ州ファーガソンとニューヨークなどで黒人男性を死亡させた白人警官が不起訴になるケースが相次いだことを受けて、警察などへの批判が高まり、全米規模の抗議行動に発展した。
今月20日にはニューヨーク市警の警察官2人がパトロール中に射殺され、逃走した黒人の犯人が直後に自殺するといった事件も発生。犯人はネット上で、報復としての警察官殺害を予告していた。
事態を重くみたバラク・オバマ大統領(53)は21日、米国民に「暴力の拒否と忍耐強い対話」の必要性を訴えた。27日にはニューヨークで、射殺された警察官の葬儀がジョー・バイデン副大統領(72)も臨席して執り行われた。
暴力の連鎖とは対極にある地下鉄車内でのクリスマスベビー誕生。人々の心を和ませ、融和へのきっかけとなる予期せぬクリスマスプレゼントであると、多くの米国民が願っている。(SANKEI EXPRESS)