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【Q&A】中国全人代 政府活動報告 成長率引き下げ 社会不安定化も
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中国全人代が開幕し、会場の大型スクリーンに映し出された李克強首相=2015年3月5日、中国・首都北京市西城区の人民大会堂(共同) 中国の第12期全国人民代表大会(全人代)第3回会議が5日、北京の人民大会堂で開幕し、李克強首相が2015年の政府活動報告を発表した。
Q 全人代って何?
A 日本の国会に相当し、メンバーは全国の直轄市、省、自治区、軍や香港などの代表約3000人。全体会議は年1回で、主要政策を盛り込んだ政府活動報告や国防費を含めた予算案などを審議し、承認する。法律の制定・改正や国家主席や首相の選出も行われるよ。
Q 強い権限が与えられているね
A 憲法では「最高の国家権力機関」と定められている。しかし、中国は共産党による一党独裁体制が敷かれ、全人代も党の指導下で開催されるため、全人代では、党が決めた政策を追認するケースも多い。
Q 今年の政府活動報告の焦点は?
A 15年の国内総生産(GDP)の成長率目標を、14年の7.5%から7.0%とした点。14年の成長率が7.4%と目標を下回り、24年ぶりの低水準となるなど経済減速を受けたものだ。10%超の成長率も珍しくなかった高成長時代が終わったといえる。経済発展途上の人口13億人の中国にとって、経済成長の鈍化が深刻になれば政府への不満の高まりなど社会の不安定化につながりかねない。
Q どう対応するの?
A 李首相は安定成長へと移行する「新常態(ニューノーマル)」の重要段階に入ったと説明。行政の簡素化や国有企業改革、外資系企業の投資制限などの規制緩和に取り組むと表明した。ただ、こうした構造改革は容易ではない。世界第2の経済大国の中国がかじ取りを誤ると、世界経済の新たな不安定要因にもなりかねず、安定成長実現は習近平指導部の最重要課題だよ。
Q 15年度予算案は?
A 国防費に前年度実績比10.1%増の8868億9800万元(約17兆円)を計上した。2桁増は5年連続で、日本の15年度予算案の防衛関係費(4兆9801億円)の約3.4倍。李首相は活動報告で「海洋強国の目標に向けて直進していく」と強調した。
Q 環境汚染への対応は?
A 李首相は「環境対策という難関攻略にしっかり取り組む」と強調。貧富の格差拡大も含め、長年の高成長で生じた社会のひずみを是正する姿勢を強く打ち出した。
Q その他の注目点は?
A 李首相は、習指導部発足後に開始した反腐敗運動の継続のほか、「世界反ファシスト戦争と抗日戦争勝利の70周年を記念する行事を催し、国際社会とともに第二次大戦の勝利と世界の公平・正義を守る」と表明したよ。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪経済構造転換への改革実行が鍵≫
中国経済は安定成長への軟着陸ができるかどうかの歴史的な転換点を迎えている。
中国は1978年に改革・開放路線に転換し、経済成長を続けてきた。89年の天安門事件や97年のアジア通貨危機、2008年のリーマン・ショックの際には成長率が鈍化したものの、そのたびに経済はV字回復した。
だが今後、成長率が長期的に低下していくのは必至だ。成長の原動力だった輸出産業は労働者の賃金上昇で生産コストがかさみ、国際競争力が急速に落ちた。東南アジアなどへの生産移転が始まり「世界の工場」の地位が揺らいでいる。
北京市や上海市といった発展した大都市は成長の余地が狭まり、上海市は今年、ついに成長率目標を掲げることをやめた。一方、各地の地方政府はこれまでの過剰な建設投資がたたり債務が拡大している。環境問題も深刻で、野放図な経済活動の拡大は限界に達した。
習近平指導部は安定成長を実現するため、経済構造の転換を目指す。不動産投資への依存を減らし、規制緩和を通じたサービス業の振興による内需拡大や産業のハイテク化を進め、経済のさらなる対外開放にも取り組む戦略だ。安定成長に順調に移行するためには、こうした改革を着実に実行できるかどうかが鍵となる。(共同/SANKEI EXPRESS)