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「正恩映画」を北へ 散布決行 韓国脱北者団体、風船にDVD8万枚
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昨年1月に韓国北部の坡州で、北朝鮮を非難するビラなどを大型風船に付けて飛ばす韓国の脱北者団体=2014年1月15日(聯合=共同) 韓国で活動する北朝鮮脱出者(脱北者)団体のリーダーが、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の暗殺を描いた米コメディー映画「ザ・インタビュー」のDVD8万枚以上を風船に付け北朝鮮に向けて飛ばしたことが分かった。AP通信や米CNNテレビが7日伝えた。韓国では別の団体がDVD散布計画を公表したが、映画を製作したソニーの米子会社にサイバー攻撃まで仕掛けた北朝鮮は「大砲やミサイルで対応する」と威嚇。不測の事態を恐れた韓国政府の要請もあり、中止になっていた。すでに4回も夜間にこっそりと散布を決行したというこのリーダーは、祖国の人たちに指導者の「真実の姿」を知ってほしいと訴えた。
報道によると、DVDを散布したと名乗り出たのは、イ・ミンボク氏。CNNはインタビューとともに風船を飛ばす様子を伝えた。イ氏は脱北者団体「直接的方法で北朝鮮を支援するキャンペーン」のリーダーとして活動しているとされる。
4回目という今回の散布は4日夜に行われた。仲間とともに風速や風向きをチェックした後、軍事境界線の近くまで移動。午前3時、風船にヘリウムガスを注入しDVDと米ドル紙幣、金政権を批判するビラを取り付け、空へと放った。北朝鮮上空でDVDを投下するよう、タイマーを備えているという。この日だけでDVD8万枚以上を飛ばしたとしている。
イ氏はCNNのインタビューに、映画自体については「低俗すぎる場面が多く、一度も笑えなかったので、最後まで見る気になれなかった」と酷評した。ただ、「北朝鮮がこの映画を嫌うのは正恩氏を神でなく人間として描いているからだ」と分析。「彼はわれわれと同じように泣き、恐れ、そして暗殺される」とし、祖国の人々が映画を見てその素顔を知ることで、神格化が崩壊する効果に期待を示した。実際、映画で金氏は米女性歌手、ケイティ・ペリー(30)の熱烈なファンで、傷つきやすい心を持つ人物として描かれている。
英紙インディペンデントなどの報道によると、北朝鮮の農業学者だったイ氏は1995年に脱北。軍事境界線近くに住み、政権批判のビラや海外のニュースが聴ける小型ラジオなどを風船に付けて北朝鮮に散布する活動を展開。飛ばしたビラは約10年間で5000万枚に上るという。
DVD散布は、3月に別の脱北者団体「自由北韓運動連合」と米人権団体「ヒューマン・ライツ・ファンデーション(HRF)」が計画を公表。これに対し、自国民に映画をよほど見られたくない北朝鮮は21日、映画は「最高尊厳を中傷、冒涜(ぼうとく)したもの」で、散布は「事実上の宣戦布告だ」とし、「無差別に攻撃する」と警告した。実際、昨年10月にはビラの付いた風船を重機関銃で射撃する事件が起きている。
このため、韓国政府は23日、危険が予想される場合は「必要な措置を取る」とし、中止を事実上要請。団体の代表も「当分の間、散布することはない」と表明していた。
ところが、実際には大量のDVDがすでに散布されていたことになる。韓国内では「北朝鮮の一般家庭にはDVD再生機がなく、効果はない」との声も多い。それでも、イ氏は「北で真実を語れば死が待っているが、風船を使えば安全な場所から真実を伝えられる」と語り、今後も風船作戦を続ける考えだ。(SAN KEI EXPRESS)