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【湘南の風 古都の波】樹齢200年 再びの春

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【湘南の風 古都の波】樹齢200年 再びの春

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本堂の灯りにカイドウの可憐な花が浮かび上がる=2015年4月5日、神奈川県鎌倉市長谷の光則寺(渡辺照明撮影)  今年はもう何回繰り返したことか。このお天気、どうなってるの? 4月も半ばなのに、温暖な鎌倉で真冬の寒さに震え上がってしまう。そうかと思うと、一転して初夏を思わせる強い日差し…。なまじ気温が上がると、かえってその反動が恐い。

 樹齢200年といわれる行時山光則寺(ぎょうじさんこうそくじ)の境内も、その天候の影響を受けたのだろうか。今年はカイドウの開花が早く、4月の上旬、桜とほぼ同時に花の見ごろを迎えた。

 鎌倉にはいまカイドウの名所と呼ばれるお寺が3カ所ある。長谷の日蓮宗光則寺、大町の日蓮宗妙本寺、そして扇ガ谷の臨済宗海蔵寺。距離がかなり離れているので、1日でお参りしようとすると、年配の人にはけっこう強行軍だろう。

 開花の時期に少し差があるので日をずらして訪れる人も多い。毎年、最も早いのが光則寺で次が妙本寺、最後が海蔵寺になる。

 光則寺は鎌倉有数の花の寺として知られる。横山仁雄(にんゆう)住職の妹で、丹精込めて庭の手入れを続ける横山園子さんによると、今年はとくに早かったようだ。境内は小さな山をひとつ隔てて長谷寺の北側。海岸に近い。しかも、谷戸の斜面が東に面して開け、春の日の光をいっぱいに浴びることができる。

 もともとの温暖な気候条件に加え、気温が緩んだと思ったら、ぎゅっと冷えるような変化もまた、刺激になったのだろうか。

 光則寺にはこの春、例年になく、たくさんの人が訪れた。春の花々の魅力に加え、本堂の格天井(ごうてんじょう)を飾る136枚の鎌倉彫が、特別に公開されたからだった。

 ≪格天井 鎌倉彫で荘厳≫

 光則寺境内にはかつて、鎌倉幕府第5代執権、北条時頼の家臣だった宿谷行時(やどやゆきとき)、光則(みつのり)親子の屋敷があったという。その光則が後に日蓮に帰依して行時山光則寺の開基となる。お寺の名前はつまり、父子にちなんでいるわけですね。

 現在の本堂は、江戸時代初期の慶安3(1650)年に建立された。横山仁雄住職によると、茅葺きだった屋根が瓦葺きになるといった変化はあるが、柱など基本的な構造はいまも残されている。

 2年ほど前から本堂の格天井の修復を計画し、横山住職が刀華会という鎌倉彫のグループに「天井を鎌倉彫で荘厳(仏像や仏堂を美しく厳かに飾ること)できないでしょうか」と相談した。住職の妹の園子さんが6年前から刀華会で鎌倉彫を習っていたからだ。

 本堂外陣の天井は格子状に144区画に区切られている。このうち通風口などになっている8区画を除く136区画を1枚ずつ鎌倉彫のパネルで飾る。

 パネルのサイズは一辺が37~45センチ。測ってみたら格天井は1区画ごとに異なっていた。ミリ単位でいうと同じものは一つもないという。その大きさに合わせて木地を調達し、全体のバランスも考えながら図案を作成する。境内に咲くカイドウや山紫陽花など14種類の花々と光則寺で飼っている孔雀にちなんだ羽根、散華(仏様を供養する時に散らす蓮を模した紙花)、宿谷家の家紋(丸に剣花菱)などだ。彫りは刀華会会員ら約120人が分担した。

 さらに昨年3月には塗りの作業が始まり、漆を塗っては乾燥させ、また漆を塗っていく工程が20回くらい続けられた。完成した136枚を前に横山住職は「鎌倉の伝統工芸が鎌倉のお寺を飾る。皆さんのおかげで素晴らしいものができました。先代住職の7回忌が7月にあるので、それまでには格天井を完成させたい」という。

 近く始まる修復工事に先立ってすべてのパネルが光則寺本堂に集められ、3月27日から4月7日までの期間限定で一般公開された。また、一部は4月17日から28日まで鎌倉彫会館ギャラリー(鎌倉市小町2の15の13)で公開中。お寺と鎌倉彫。光則寺だけでなく、これからもさまざまなコラボの可能性がありそうだ。

 光則寺ではふだん、本堂の内部は公開していない。ただし、今年はお盆、お彼岸、お会式など夏から秋にかけての行事が一段落した後、11月2日から12日まで本堂の一般公開を予定している。今度は鎌倉彫の天井を見上げることになる。近くで観賞するのとはまた、印象も異なりそうなので、再会が楽しみですね。(文:編集委員 宮田一雄/撮影:写真報道局 渡辺照明/SANKEI EXPRESS

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