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ノルウェーで消えるFMラジオ放送 2017年に世界初の全面停止
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スマートフォンで音楽を聴く男性。今や音楽は、FMラジオで聴くものではなく、圧縮されたデジタルデータをスマホなどの端末で聴く時代になった=2015年3月11日、米カリフォルニア州ロサンゼルス(ロイター) ノルウェー文化省が、2017年にFMラジオ放送を全面停止すると発表し、FMを通じてさまざまな音楽に出会った世界中のファンに衝撃が広がっている。FMの全面停止は世界初。より多くの情報データを送受信できるデジタルラジオやインターネットを通じて音楽を聴くストリーミング・サービスの普及により、電波で送受信するアナログ方式のFMは、その役割を終えたと判断した。テレビと同様にアナログからデジタルへの移行は時代の趨勢(すうせい)で、追随する国もありそうだ。ただ、周波数を合わせラジオから流れる音楽に感動したファンの郷愁も強く、FMを生んだ米国からは反発の声が上がっている。
「ラジオのデジタル化は、さらなる多チャンネル化の扉を開き、全国のリスナーに恩恵を与えるだろう」
ノルウェー文化省のトーリル・ビドバイ大臣は今月16日、国民に向けこう語り、FM全面停止への理解を求めた。
米CNNテレビや英紙デーリー・メール(いずれも電子版)など欧米メディアによると、現在5局あるFMラジオはすべてデジタル・オーディオ放送(DAB)に切り替える。2017年1月11日から地方ごとに順次実施し12月13日に完了させる。
DABは欧州で導入されているデジタルラジオの規格。データをデジタル圧縮することでより多くの情報量の送受信が可能となり、CD並みの高音質に加え、安定した受信、自動での局選びなどを実現した。ノルウェーではすでに22局が開局している。
DABは、FMに比べ運営費が約8分の1と安く、全面移行すれば、年2億ノルウェークローネ(約30億円)の節約となり、浮いた経費を新たな技術革新などに回せるとしている。
国営ノルウェー放送協会のトール・ヤルムン・エリクソン会長は「きょうはラジオを愛する人々にとって重要な日だ。質が高く多様なラジオ番組をリスナーに提供するため、多くの経営資源を(DABに)集中できるようになる」と歓迎した。
全面移行すると、国内に約790万台あるFMラジオが使えなくなるなど、影響は小さくない。ただ、デンマークの調査会社TNSギャラップによると、ノルウェーのラジオ・リスナーの56%が毎日、DABを聴いているという。
また、全世帯の55%が最低1台のDAB対応ラジオを所有しているほか、自家用車の2割がDAB対応カーラジオを備えているとの調査結果もあり、ノルウェー政府は完全移行は可能と判断した。
だが、今回のノルウェーの決定に対し、FMをこよなく愛する米国からは不満の声が聞こえてくる。FMは1930年代に米国で生まれた。それまでのAMとは違い、ステレオ放送が可能となり、高い音質が音楽ファンを魅了。米国のFMラジオからは数多くの世界的な大ヒットが生まれた。
「米国はノルウェーに続くのか?」。米紙クリスチャン・サイエンス・モニター(電子版)はこんな見出しを掲げた記事を掲載。「FMは、音源を圧縮するDABより実は高音質なうえ、DABは、FMの電波よりも数秒遅れで到着する」といった音楽専門家の声を紹介した。
さらに、「FMを全面停止にすれば、約5億台のラジオが使い物にならなくなる」とする米連邦通信委員会(FCC)のコメントも伝え、ラジオのデジタル化の流れに待ったをかけようと躍起になっている。(SANKEI EXPRESS)