【野口裕之の軍事情勢】未然防止不可能な生物・化学兵器テロ勃発は「起こるかもしれない」ではなく「いつ起こるか」
更新イスラム国に製造能力
9・11直後に使用された炭疽菌が5ミクロンだったと前述した。技術が高度なほど、菌を微小にそろえられ→浮遊時間を長くし→被害を助長する。米国開発の炭疽菌はロシアの2分の1、テロ組織の20分の1程度と観測されていた。炭疽菌の実戦化には膨大な資金+高度な科学技術が必要との証左ではある。ところが、近年の捜査・分析ではそうでもないらしい。生物兵器製造の経験がなくとも、一定の科学知識を修めていれば、インターネット上にあふれる情報を応用して製造法を編み出し、器具・材料も中古・代用品を使えば、日本の勤め人の平均年収プラスαの価格で手に入るという。
アルカーイダやイスラム国が生物・化学兵器もしくは、製造能力を有していると冒頭述べたが、物証はないものの傍証が在る。炭疽菌に加え、わずか15年で350万人以上を「殺戮」した歴史を刻む《天然痘》を例に話を進める。
ソ連は冷戦中、核・生物・化学兵器を投じる西側攻撃を検討し、1990年時点で80~100トンの天然痘ウイルス製造能力も維持していた。問題はここから。91年のソ連崩壊で、科学者6万人が失職し、相当数が外国に離散した。一部細菌学者は天然痘ウイルスなどを「手土産」に、北朝鮮で研究に従事する。
