【木下隆之の試乗スケッチ】“先進技術の塊”アウディA8、デジタルとアナログの見事な融合
更新A8はアウディのフラッグシップセダンである。全長5170mm×全幅1945mm×全高1470mmという堂々たる体躯である。少なくとも長さと幅は世界基準を超える。さらにはプラス130mmのロング仕様も用意されているというから、もはやショーファードリブンといってもいい。つまり、想定ユーザーはシニア層が予想されるはずなのに、ここまでいくか、なのだ。A8の想定顧客が弁護士や医師や、あるいは大会社の経営者なのだろうとするのは古い考えのかもしれない。ミレニアル世代の起業家がターゲットならば納得できる。どこまでも時代に先を急ぎたがるアウディらしいと思わず笑みがこぼれた。
乗り心地は魔法の絨毯
ただし、そんなA8なのに、走りはアコースティックな味わいがある。ドアの閉まる感覚は分厚い木の扉を閉めるときのようにズドンと重厚感を伴うし、エアサスの味付けは魔法の絨毯のようにしっとりとしている。無機質な電気仕掛け一辺倒ではないのだ。
試乗したV型8気筒4リッターターボは、どこまでも静かで心地よい。トルクが強烈だから、内燃機関のエンジンらしくグイグイとトルクを発生する。
アウディとしては初となる4輪操舵は、小回り性を狙っただけでなく、高速域でのスタビリティにも貢献してくれている。アナログにも徹底的に力を注いでいるのである。
驚くほど電気仕掛けでありながら、基本の部分は金属とゴムにガソリンを注いで走っている感覚を残しているあたりが憎い。
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「木下隆之の試乗スケッチ」は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちらから。
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【プロフィール】木下隆之(きのした・たかゆき)
レーシングドライバー 自動車評論家
ブランドアドバイザー ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。






