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韓国経済に斜陽の兆候 「再び日本に学べ」ウォン高で輸出モデル崩れる

ニュースカテゴリ:政策・市況の海外情勢

韓国経済に斜陽の兆候 「再び日本に学べ」ウォン高で輸出モデル崩れる

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【漢江経済リポート】

 韓国経済に斜陽の兆候が現れ始めている。ウォン高の進行で輸出企業を牽引(けんいん)役に成長を維持するというモデルが崩れつつあるというのだ。

 専門家の間では、米投資銀行の破綻を契機とする2008年秋のリーマン・ショック当時よりも悪化するとの長期見通しも出ている。こうした中、経済関係当局や財界は「日本型デフレ」の回避を意識する一方、国民の間には長期不況への対処法で「再び日本に学べ」との認識も生まれている。

 成長見通し下方修正

 中央銀行の韓国銀行は10月11日、これまで3.0%としてきた2012年の経済成長見通しを2.4%に、13年は3.8%から3.2%に、それぞれ0.6ポイントの大幅な下方修正を発表した。

 原因はウォン高と、輸出に過度に依存する経済構造だ。韓国は政府主導のウォン安政策を取り、サムスンや現代などの巨大輸出企業を支え、韓国経済を牽引させてきた。リーマン・ショックなどからいち早く脱却し、「奇跡のV字回復」を成し遂げた背景にもウォン安があった。

 ところが、ここにきてウォン高が進行。韓国メディアは「1998年以降、3回あった世界的な景気低迷期に、ウォン相場が1ドル=1100ウォンを割り込む高値に振れたのは今回が初めてだ」(朝鮮日報)と悲観している。

 欧州債務危機による世界経済の冷え込みも追い打ちをかける。「世界ナンバーワンのFTA(自由貿易協定)国家」(李明博大統領)を自任する韓国は外需依存度が極めて高い。

 韓国銀行によると11年の外需依存度は113.2%。10年は105.2%で、2年連続で100%を超えた。韓国紙によると、GDP(国内総生産)を基準とした10年の貿易依存度は日本が25.1%、米国が22.0%、中国が49.5。これに対し韓国は87.4%と高く、韓国経済界は政府に早急な対策を求めてきた。

 低成長期の資産運用

 有力シンクタンク筋は韓国経済の弱点を「内需主導国に比べ、世界経済の影響を受けやすい」と指摘。その上で「今の状況が長期化すれば国民生活は高い輸入品で苦しくなり、内需縮小の影響でさらに悪化するという悪循環に陥る」とみている。

 企業活動や国民生活への影響は深刻だ。朝鮮日報は10月末、造船世界3位の現代重工業の今年の受注額が9月現在で131億ドル(約1兆500億円)と、前年同期比で40%以上も減ったと報じ、「ここ数年は欧州の景気低迷で商船の受注が激減し、今後の見通しも暗い」とする業界関係者の悲観論を伝えた。

 李大統領は10月29日、国民向け演説で「すぐに回復すると確信している。困難なときこそ起業家精神を鼓舞しなければならない」と主張したが、韓国財界筋は「この発言自体、韓国経済の危機の深刻さを反映している」と冷めた見方だ。

 韓国では「日本のように(物価下落と実体経済の縮小が同時進行する)デフレスパイラルに突入するのではないか」との警戒論も台頭している。7月の消費者物価指数が過去12年で最低となり、物価上昇率の縮小状況が1990年代初めの日本に似ている、というのだ。

 このため、低成長期の資産運用について「日本に学べ」の認識が国民の間で広がっている。証券・金融大手は、野村証券などの企業戦略を強く意識し、資産運用型商品の開発に力を入れている。だが、金融当局筋は「経済の規模や内外需の依存度合い、金融市場のあり方の違いが大きすぎ、不況をしのぐための日本研究が役に立つかは未知数だ」としている。(ソウル 加藤達也)

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