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TPP交渉参加へ大きく前進 政府・与党内の調整着手
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安倍晋三首相は24日、一連の訪米日程を終え、帰国した。焦点の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉参加問題に関して、日米首脳会談で「聖域なき関税撤廃が前提ではなくなった」(首相)と確認できたため、25日から政府・与党内調整に着手し、交渉参加に向けた動きを加速させる。
菅義偉官房長官は24日のNHK番組で、TPP交渉参加の表明時期について「そんなに長引かす必要はない」と述べ、首相が週内にも表明するとの認識をにじませた。政府内には今月28日か3月1日に想定される国会での首相の施政方針演説で表明する案も浮上しているが「首相が25日、自民党役員会に経過を報告し、その状況次第だ」と述べるにとどめた。
安倍政権がTPP交渉の参加に積極的なのは、経済政策「アベノミクス」の第3の矢となる成長戦略の実現に弾みとなるからだ。経済界や市場関係者からも「日本の懸念材料が払拭された。大きな前進だ」(経団連の米倉弘昌会長)と評価する声が相次いだ。TPPに加われば輸出産業の競争力強化や貿易・投資ルールの国際化による規制緩和が見込める。
国内経済への影響について政府は新たな試算を作成中だが、例えば2006年に発効した日・マレーシア経済連携協定(EPA)ではマレーシアが中・大型車の関税50%を5年間かけて撤廃したことで、日本からの自動車輸出額は11年に842億円となり、EPA発効前から20%増加した。日本は交渉参加国のうち、米国など4カ国とEPAを結んでおらず、TPPでは一層の輸出拡大効果が期待できる。
このため、第一生命経済研究所の熊野英生・首席エコノミストは「海外の需要を取り込むTPP参加を抜きに成長戦略は考えられない」と語る。
さらに、知的財産や環境分野などの共通のルール作りも目指しており、結果的に国内の規制緩和につながるとして期待が大きい。規制緩和に伴い外資が国内に参入すれば「技術革新を誘発するなど関税撤廃以上の効果が見込める」(大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト)。
オバマ大統領は首脳会談で大胆な金融緩和や機動的な財政運営を掲げるアベノミクスに一定の評価を与えた。ただ市場からは「中長期の成長戦略で(安倍政権の)真価が問われる」(熊谷氏)と指摘されており、輸出拡大や規制緩和が見込まれるTPPでの前進は大きな成果だ。