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海外情勢
フィリピン、7%成長へ発送電能力拡充 7兆2680億円投資必要
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フィリピンは高まる電力需要に対応し、発電能力増強に注力する。同国政府が2030年までの電力政策の指針として策定した「フィリピン・エネルギー計画」によると、11年の同国の発電能力は合計1616万キロワットで、30年までの経済成長率を年平均7%と仮定した場合、電力需要が2930万キロワットに達する見通しだ。供給実現に必要な投資額は合計3兆1740億ペソ(約7兆2680億円)にのぼるとみられている。現地紙ビジネス・ワールドなどが報じた。ベニグノ・アキノ政権は電力政策の基本方針に「普及拡大」「低炭素社会の実現」「安定供給」の3点を掲げ、同計画で15年までに国内全土に送電網を拡張し、17年までに610万世帯に電力を供給して世帯当たり普及率を90%に引き上げる目標を設定した。
こうした政府方針を受け、同国エネルギー省は、電力普及率が低い南部ミンダナオ島を始めとする全国送電網の拡大を推進する方向だ。また、電力エネルギーの自給を促進し、11年には31%と全電力源の中で最多だった輸入石油への依存度低減を図る。
同省幹部は、30年までに天然ガス開発に1兆2000億ペソ、その他の石油代替燃料の開発に9597億ペソ、太陽光や水力など新エネルギーによる電力計画に5567億ペソの投資が必要になるとの認識を示した。
原子力発電については、11年の東日本大震災時に発生した福島第1原子力発電所の事故の影響もあって反対が根強いが、フィリピン政府は「研究をやめるべきではない」としており、選択肢として検討中との立場だ。
同国は送電網に組み込まれていない集落が3万2441カ所存在するなど電力インフラが未発達なうえ、電気料金は東南アジア地域でもっとも高いといわれており、電力分野が経済成長の阻害要因のひとつとされる。
日本の国土交通省によると、同国の03年の世帯当たり電力普及率は77.1%。マニラ首都圏が99.1%だった一方、最も低いミンダナオ島のムスリム・ミンダナオ自治区では31.7%にとどまっていた。
フィリピンの電力分野には日本から東京電力や中部電力をはじめとする電力会社のほかに住友商事や丸紅といった大手商社などが進出し、発電所建設やバイオ燃料開発に関わるなど、両国の関係は深い。
ここ数年は、韓国や中国からの進出も増えているほか、地場のサンミゲルやアヤラ・グループといった巨大複合企業も投資を増やしており、今後、国内外の企業が入り乱れての電力開発が加速しそうだ。(シンガポール支局)