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震災2年…経済は暗転の記憶 アベノミクスで回復の兆し

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震災2年…経済は暗転の記憶 アベノミクスで回復の兆し

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東日本大震災以降、歴史的な円高の影響や、欧州経済の不振が響き、日経平均株価は低迷した=2011年8月9日、東京・八重洲  東日本大震災で、リーマン・ショックから緩やかに回復していた日本経済は暗転した。2年間の経済データを振り返ると、超円高と株安に長く苦しんだ末、本格回復のきっかけをつかむには、大胆な金融緩和などを柱とする安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の登場まで待たねばならなかったことがわかる。一方で、原発停止にともなう火力発電の燃料輸入増で貿易赤字が拡大。なお震災の影も引きずる。

 ≪株価≫ 3営業日で1829円値下がり 

 震災発生から1年半余り、東京株式市場の株価は低迷を続けた。

 震災当日は金曜日。取引終了までの約14分で日経平均株価は約100円急落した。週明けには日本経済を悲観した売り注文が本格化。発生から3営業日で、平均株価は1829円(17.5%)値下がりし、8600円台まで下落した。

 2011年7月には債務危機がスペインなどに波及。超円高に加え、10月にはタイの大洪水で日本メーカーの工場が被災するなど、株式市場は次々に逆風に見舞われた。世界的な金融緩和で12年3月には一時1万円台を回復したが、その後も円高で株価は低迷を続けた。

 本格回復基調となったのは昨年末から。円安や米経済の回復とともに、日米の金融緩和で投機資金が株式市場に流入した。

 株価は今年1月4日に震災前水準に、今月8日にはリーマン・ショック前の水準にようやく戻った。市場では今後も上昇相場への期待が強い。

 ≪円相場≫ 「超円高」70円台のスタート

 輸出企業を苦しめた1ドル=70円台の“超円高”は、震災から始まった。保険金の支払いや復興資金確保のため円の需要が強まるとの思惑から、2011年3月17日の米ニューヨーク外国為替市場で一時、1ドル=76円25銭をつけ史上最高値を更新。投機的な円買い抑制のため同18日には日米欧の先進7カ国(G7)が協調介入し、いったん80円台に値を戻した。

 だがその後、再び円高に向かう。深刻化した欧州債務危機や米景気後退懸念から、投資マネーは、震災後も安全資産と評価された円に流入。10月末には一時、1ドル=75円32銭と最高値を更新した。日銀の金融緩和、民主党政権の大規模な為替介入でも円高を阻止できなかった。

 ところがアベノミクスで、一転して円安が進行。11月中旬から約4カ月間で円は79円台から95円台へと約15円超、下落した。今後も日銀の金融緩和姿勢が強まる見通し。SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは「4~5月にかけて1ドル=100円の大台をつける」とみる。

 ≪GDP≫ 供給網寸断と消費低迷響く

 東日本大震災直後、国内総生産(GDP)は大きく落ち込んだ。工場の被災で部品サプライチェーン(供給網)が寸断され、自動車の生産が一時ほぼストップしたほか、個人消費も国内全体で低迷した。

 だが、急ピッチで工場の復旧が進んだ結果、2011年7~9月期には実質で前期比10.6%増(年率)と好転。復興需要も増えた。

 しかし、欧米や中国経済の伸び悩みなど海外要因とともに、内需を支えてきたエコカー補助金の終了も響き、伸びは鈍化。12年4~6月期からは再びマイナス成長に転じた。

 ただ、市場では急速に楽観論が広がっている。円安や株高で同10~12月期には底を打ち、今後は個人消費の盛り上がりも見込まれる。

 13年1~3月期以降は「(年率で)2%程度の成長が見込める」(SMBC日興証券の牧野氏)といった強気の見方も出てきた。

 ≪貿易≫ 輸出伸び悩み 膨らんだ赤字

 輸出から輸入を差し引いた日本の貿易収支は、赤字基調が続いている。震災直後は輸出企業の工場が被災してモノが作れず、輸出が激減して赤字額が膨らんだ。

 その後は原発の停止に伴い、火力発電所がフル稼働したため、燃料となる液化天然ガス(LNG)や原油の輸入が急増。企業の生産活動は震災直後の打撃からは回復したが、円高で輸出は伸び悩み、貿易赤字が定着した。

 2011年の貿易収支は第2次石油危機直後の1980年以来31年ぶりの貿易赤字に転落し、12年は過去最大の6兆9307億円に拡大した。

 貿易赤字定着で海外とのモノやサービス、投資などの取引状況を示す経常収支も今年1月まで、初の3カ月連続の赤字となった。

 みずほ証券の倉持靖彦投資情報部副部長は「燃料の輸入は高止まりし、当面は貿易赤字が続く」と指摘。日本経済の大きなリスクとなっている。

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