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【ネットろんだん】プーチン大統領会見で炎上 記者は「空気」を読むべきか

ニュースカテゴリ:政策・市況の海外情勢

【ネットろんだん】プーチン大統領会見で炎上 記者は「空気」を読むべきか

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 「空気読め」「この記者、消されるぞ…」。4月29日に行われた安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領の首脳会談。日本のネットでは、両首脳による共同記者会見でプーチン氏をいらだたせた日本のテレビ局記者の質問に話題が集中した。記者への批判にとどまらず、会見での“作法”や領土問題の本質論まで、議論は意外な広がりをみせている。

 「(北方領土交渉を)妨げたいなら、激しくて直接的な質問をすることだ」。プーチン氏は記者会見で、TBS記者の代表質問に鋭い口調で“応戦”した。記者は、現地で外国企業が相次いでインフラ整備を受注し、ロシア政府による「実効支配が強まっている」と指摘。今後の現地政策や交渉への影響を尋ねていた。

 記者会見はテレビで生中継され、ネットでも話題に。質問が交渉の第一歩に水を差したとして、ツイッターや匿名掲示板では「空気の読めない質問」「日本の国益を害したいのか」などと批判が集中。プーチン氏が「質問原稿」を読み上げた記者の姿勢も皮肉ったため、「棒読みはだめだ」といった非難も上がった。

 「痛いとこ」聞いてナンボ

 ネットの普及で記者会見など取材過程の可視化が進んだ昨今、マスメディアが批判されることは珍しくない。匿名掲示板では、今回の“炎上”を「いかに日本のマスコミが揚げ足取り用の質問しかしてこなかったかという証拠」と、冷ややかにみる意見が少なくない。

 ただ、こうしたメディア批判に対して、記者の職責を踏まえた上での反批判も目立っている。「相手の痛いところ、喋(しゃべ)りたくないことを聞いてナンボだろ。ロシア側の最近の実効支配の強化は突っ込まないと」「空気なんか読む必要ないだろ記者なら。都合の悪い質問をどうかわすかも政治家の技量」(匿名掲示板)

 相手の嫌がる質問も取材のひとつのやり方、というわけだ。もっとも、「で、聞き出したいことは聞けたの? それができてないならその戦術は間違ってるんじゃないの?」(ツイッターから)と、効果を疑問視する声も上がる。

 ちなみにプーチン氏は、質問に不快感を示しつつ、「われわれは本当に(領土)問題を解決したいのだ」と強調。同時に、北方領土で暮らすロシア人に触れて「彼らの生活を考える必要がある」とインフラ整備の必要性も説明した。これを質問の成果と見るべきかどうか。

 ネタ、炎上から本質論へ

 そもそも日本のネットでプーチン氏は独自の人気を集めている。ソ連国家保安委員会(KGB)出身の経歴や、こわもての見た目、射撃や柔道に親しむ様子から、同氏の写真を集めたまとめサイトまで存在する。

 今回も質問の是非をめぐる炎上の最中、「激おこプーチン丸」「この記者消されるぞ…」などと騒動をネタに面白がる人々も続出。北方領土問題という本筋をよそに過熱する「ネタ化」「マスコミたたき」は、今やネットの日常風景ともいえる。

 一方で、「どういう質問のほうが良かったか? という方向で議論したほうが面白いと思う」(ツイッターから)などと質問の是非から一歩進み、報道のあり方や領土問題の核心を問う議論が現れたことも見逃せない。プーチン氏のこわもてを引き出しただけでなく、物事の本質を探る動きが現れたことだけでも、冒頭の記者の質問には意義があったといえるのではないか。(三)

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【用語解説】日露首脳会談

 安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領は4月29日、モスクワ市内で会談し、北方領土交渉を加速化させるとする共同声明を発表、停滞していた平和条約交渉を再開させた。中国の海洋進出を踏まえ、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会の設置や、極東開発に向けた協力推進なども盛り込んだ。日本の首相によるロシア公式訪問と共同声明発表は2003年以来10年ぶり。

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