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「フェラーリ売れすぎ」は心配無用? しぼみ始めた中国の消費意欲
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フェラーリ・ジャパンCEOのハーバート・アプルロス氏(左)と、フェラーリS.p.Aプロダクト・マーケティングマネージャーのアンドレア・バッシ氏 「中国市場での販売を抑制せよ」。イタリアの高級車メーカー、フェラーリのモンテゼモロ会長が今月8日、売れすぎると独創的なブランド価値を維持できなくなるとして、中国で急拡大した需要には応じない考えを明らかにした。
中国メディアによると、邦貨換算で3000万円は下らない新車のフェラーリが中国では昨年、右から左に500台も売れてしまったという。
4月の「上海モーターショー」でもフェラーリやランボルギーニなどを集めた「豪華車館」が連日、入場制限を行うほどの人気ぶりだった。展示されていたポルシェの購入契約をその場で結ぶ中国人の姿をみかけ、金満ぶりに驚かされた。
だが、モンテゼモロ会長による「中国での売れすぎ懸念」はこの先、杞憂(きゆう)に終わるかもしれない。
昨年11月にスタートした習近平指導部が腐敗対策として推進している「倹約令」が急速に浸透し、国内での消費意欲が急速にしぼみ始めたからだ。
中国商務省は今月16日、2013年の小売売上高が前年比で13%増にとどまると予測する報告をまとめた。
目玉となる政府の消費促進策がなく、倹約令も影を落とすと分析。12年の同14.3%増を下回るとした。
商務省の報告では、宴会で人気の「白酒(バイジュウ)」と呼ばれる中国産高級蒸留酒の消費が深刻な不振に直面し、高級レストランなどでの外食消費も低迷するとされる。
高級車に関しても政府部門や軍、国有企業などで調達を手控える動きが広がった。「公用車の買い替えは安価な国産車にせよ」との通達も相次いでいる。政府部門に連なる富裕層も消費行動で目立つことを避けようとしている。
腐敗対策としての倹約令に異論をはさむ余地は少ないが、それが中国経済成長の足を引っ張る「想定外の副作用」までもたらす懸念が指摘され始めた。
中国の経済成長率は、11~12年に減速局面が続いた後、回復に向かうかに見えた。
だが、輸出や投資に続く新たな成長エンジンと期待された消費の足かせになることに加え、成長パターンの転換も阻みかねない。
中国当局は、輸出依存型の経済構造から、内需主導型への転換を急いできたが、共産党や政府部門などの幹部ら、守旧派の既得権益層の抵抗で、富の再分配に向けた税制の改革が先送りされ続けており、大衆の消費意欲は盛り上がらない。
既得権益層の幹部らによる浪費が過去の消費を支えてきたゆがんだ実態が、図らずも「倹約令」で浮き彫りになったのは皮肉だ。今年1~3月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は前年同期比7.7%増と、4期連続の8%割れ。7月15日発表の4~6月期も8%割れが確実とみられている。
倹約令だけが理由ではないにせよ、消費という次なる中国経済の成長エンジンの点火が遅れて“黄信号”がともったことは事実。関係者によると、フェラーリ級の高級車需要は目下のところ、昨年の3割減という。(産経新聞上海支局長 河崎真澄)