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アフリカで日本企業の雇用40万人に 人質事件踏まえた人材育成支援も
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安倍晋三首相は2日、アフリカの経済発展などをテーマに横浜市で開かれている第5回アフリカ開発会議(TICAD V)の分科会「平和構築の強化」に出席し、アルジェリア南部を含むサハラ砂漠南部の「サヘル地域」に対し、今後5年間で1000億円の開発・人道支援を表明した。茂木敏充経済産業相も演説で、アフリカでの日本企業による雇用者数を現在の推計20万人から5年間で2倍の40万人に増やす目標を掲げた。
1000億円の開発・人道支援は日本人10人が犠牲となった1月のアルジェリア人質事件を踏まえたもので、安倍首相はテロ対策や治安維持強化に向け2000人の人材育成支援も打ち出した。
人質事件について安倍首相は「サヘル地域の安定が北西アフリカ全体の繁栄に不可欠だと改めて実感した」と指摘。食料、教育、保健などを軸とする社会システムの強化や女性と若者の自立を支援する考えを示した。
一方、茂木経産相は「アフリカでは若年層の雇用確保が喫緊の課題となっているが、日本はこの点でも最適なパートナーになれる」と強調。日本企業のアフリカへの進出を後押しして現地経済への貢献を高め、先行する中国などに対抗する考えだ。
茂木経産相は、南アフリカなどアフリカに5カ国ある日本貿易振興機構(ジェトロ)の事務所を倍増させる方針も示した。今後5年を掛け、来年にも設置するタンザニアをはじめ、資源開発や経済発展が期待される国に拠点を開設。アフリカ進出を検討する日本企業に現地の投資環境に関する情報の提供や、パートナー企業の紹介などを行う。
さらに政変や紛争などで日本企業が受ける損害をカバーするため、独立行政法人の日本貿易保険が手掛ける貿易保険について3日から、アフリカの19カ国を対象に引き受け条件の緩和などを実施。アフリカでの現地雇用の創出に寄与したい考えだ。
日本政府はこのほか、アフリカ30カ国を対象に治安維持や司法などの分野で行政官5000人の育成も計画。国連平和維持活動(PKO)センターへの支援を通じ、平和構築に関わる人材を3000人育成する。
2日の会合ではアフリカ貿易や貧困削減、平和と安定などを議論。アルジェリアのベンサラ国民評議会議長は「テロに対抗する決意を表明したい」と述べ、日本の支援に感謝を示した。
国連の潘基文(パンギムン)事務総長は「平和と開発は相互に補強しあう関係」と指摘した。
第5回アフリカ開発会議にはアフリカから51カ国が参加。初日の1日には安倍首相が開会式の基調講演で、今後5年間で政府開発援助(ODA)約1兆4000億円を含む最大3兆2000億円の官民支援を実施することを表明するとともに、産業人材3万人を育成する「安倍イニシアチブ」を発表した。
北アフリカ・アルジェリア南東部イナメナスのガス田施設で1月16日、プラント建設大手、日揮の日本人社員ら多数の外国人がイスラム武装勢力に拘束された事件。アルジェリア軍が17日に犯行グループへの攻撃を開始し、19日に作戦を完了したが、日本人10人が死亡するなど多くの犠牲者を出した。