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インフラ投資に個人マネー 15年度にも市場誕生 設備資金の出し手期待

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インフラ投資に個人マネー 15年度にも市場誕生 設備資金の出し手期待

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 投資家から資金を集めて空港や道路、発電所といったインフラに投資するファンド専門の新市場が、2015年度をめどに誕生する。国内では安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」や20年夏季五輪の東京開催決定を追い風に、グリーンエネルギーの新設や公共インフラを更新する資金需要が高まっている。その資金の出し手として期待されるのが個人マネー。日本取引所グループも、個人投資家が参加できるインフラ投資専門の新市場創設に向けた準備を開始。14年のNISA(少額投資非課税制度)開始を機に投資意欲が高まりつつある個人の投資機会を広げたい考えだ。

流動性・透明性確保へ

 インフラへの投資は欧米やアジアでは一般的で、オーストラリアでは14銘柄、シンガポールでも13銘柄のインフラファンドが上場。世界全体では50銘柄、時価総額(1月30日現在)は計10兆4000億円に上っている。

 タイでも今年、市場が整備され、4月には首都バンコクの高架鉄道運営会社が出資するファンドが新規株式公開。過去最大の625億バーツ(当時で約2070億円)を集めた。

 世界的にはインフラを対象とした市場が続々と整備され、取引も活発化している。インフラ事業は、需要が景気に左右されにくいため、投資家にとって安定収入が見込めるからだ。

 しかし国内では、年金基金など一部の機関投資家を除けば知名度は低く、個人を対象としたインフラ市場は存在しない。

 インフラファンドへの関心が世界規模で高まる中、日本取引所グループは今年5月、15年度をめどにインフラファンドを上場する市場の創設を発表。インフラへの投資を促す環境整備に向けた準備を本格化させた。

 目的の一つが流動性の確保だ。株式を売りたいときに売って現金化できなければ、資金余力の乏しい個人投資家にとって投資の魅力は低下してしまう。インフラファンドも、株取引のように売りたいときに即日売れるような仕組みを検討する。

 透明性の確保も重要だ。インフラ投資のための専門市場がなければ、取引される商品価格は不透明になりかねない。取引価格の透明性や公正性が確保されなければ、個人投資家はインフラ投資に手を出しにくくなる。

 折しも、高度経済成長期に建設した高速道路などのインフラは老朽化。設備の更新は待ったなしの状態で、安倍政権は成長戦略の重要な目玉と位置づけている。しかし、財政事情は厳しく整備は思うように進まない。

NISA運用の受け皿

 財源不足を打開するため、安倍首相は今年6月、高速道路や空港などの整備にPFI(民間資金活用による社会資本整備)を積極活用する方針を打ち出した。その規模は今後10年間で12兆円と、過去10年間の実績の3倍に当たる。

 経済産業省は東京電力福島第1原発事故による電力不足を補うため、メガソーラーなど新エネルギー施設の建設・運営資金を、インフラ投資向け新市場で調達できるよう後押しする。

 金融庁は、10月1日から受け付けを開始したNISAの総額を20年までに25兆円とする目標を設定した。NISAを使って資金運用を始める多くの個人投資家にとって、新市場に上場されるインフラファンドは安定的な収益が期待できる魅力的な投資先になるからだ。

 市場関係者も「新市場に上場したインフラ関連商品は、NISAを契機に投資を始める投資家に受け入れられる」とみる。

 専門市場の創設を前に、民間ファンドの動きも加速。野村アセットマネジメントが運用し、10年10月から販売している「野村ドイチェ・高配当インフラ関連株投信」は9月に入ってから1カ月ほどで750億円を上回る資金を集めた。

 米国の資源パイプラインなどに投資するもので、「安定的な収益を見込んだ個人投資家の間で人気が高い」(野村証券商品企画部)。

 国内でも太陽光発電所や空港などの建設・運営といったインフラを対象に投資するファンドを設立する動きが出ている。

 カブドットコム証券の河合達憲チーフストラテジストは「安定した収益を上げられるかが課題になる」と指摘した上で「東京五輪の開催決定を受けてインフラ投資に対する個人投資家の興味は大きく高まりつつあり、新市場はこうした投資家の受け皿になる可能性が高い」。

 東京証券取引所の小沼泰之執行役員は「取引所として、しっかりとした上場基準を作っていく必要があり、制度整備の作業に着実に取り組んでいきたい」としている。(佐藤祐介)

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