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海外情勢
米デフォルト危機に現実味 G20で世界各国から追及必至
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米政府機関の一部閉鎖に続いて連邦債務の支払いが滞るデフォルト(債務不履行)の危機が現実味を増し、世界経済に暗雲を漂わせている。震源地のワシントンでは、10日から20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議など一連の国際会議が開かれるが、米国に対し各国から厳しい声が相次ぎそうだ。
「政府機関の閉鎖だけでも十分問題だ。さらに債務上限の引き上げができなければ、世界経済に深刻な打撃を与える」
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は3日、G20に向けた講演で強い懸念を示した。その上で、危機回避はオバマ政権と議会の「重大な使命だ」と強調した。
欧州は債務危機からの脱却に手間取り、その間に中国をはじめとする新興経済国も成長が鈍化するなど、世界経済は「踊り場」(ラガルド氏)にある。その中で、緩やかな回復を続ける米国経済は、市場に安心感を与えてきた。
こうしたなか、懸念されていた米財政リスクがついに顕在化した。一時的とみられた政府機関閉鎖は長期化する恐れも強まる。仮に1カ月程度、閉鎖が続いた場合、政府関連の取引中断などから、10~12月期の国内総生産(GDP)成長率を1.5%押し下げるとの試算もある。
さらに、17日には連邦債務が上限を超過する。デフォルトが現実味を帯びる中で、財務省は3日、「2008年の金融危機以上の破滅的な大不況に陥る」と警告する報告書を発表した。
英国のキャメロン首相やフランス銀行(中央銀行)のノワイエ総裁も「米経済の重要性を踏まえると世界的なリスクだ」と警戒感を隠さない。
一方で米連邦準備制度理事会(FRB)は、米国経済の回復が続けば、年内に量的金融緩和を縮小する方針だが、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)は緩和縮小の先送りを決定し、金融市場が動揺した。財政の迷走で金融政策の不透明さも増している。
G20では米財政や量的緩和の見通しについて、ルー米財務長官とバーナンキFRB議長に説明を求める声が相次ぐのは必至だ。
しかし、金融市場では「今後の展開が不透明ななか、各国の不安を解消するのは難しい」とみられている。(ワシントン 柿内公輔)