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日露蜜月、売り込みのチャンス 医療・農業など商機模索

ニュースカテゴリ:政策・市況の国内

日露蜜月、売り込みのチャンス 医療・農業など商機模索

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 日本とロシアの経済協力やビジネスが新局面を迎えている。10月に官邸の肝煎りで発足した「日露交流促進官民連絡会議」にはエネルギーだけでなく、都市開発や医療、農業などで商機を探る大手商社・メーカーが名を連ねた。ロシアが投資を呼びかけるのは、外貨を稼ぎ出してきたエネルギー産業への先行きに危機感を持つからだが、雇用創出につながる経済協力にどこまで新味を打ち出せるか。

極東開発に協力

 4月末の安倍晋三首相の訪露以来、ロシアのプーチン大統領との首脳会談はすでに4回に及び、2020年の東京五輪誘致にも一役買うほどの蜜月ぶりだ。政府幹部は「このチャンスを逃す手はない」と意気込む。

 初会合がまだ開かれていない官民連絡会議だが、約30社の首脳、地方自治体トップら42人の顔ぶれは多士済々だ。企業には「会議への参加は社長・会長」を条件としロシアビジネスへの本気度を試した。

 10月末には国土交通省が主導し、ゼネコンや電機メーカーなど82社・団体が参画する産学官連携の「日露都市環境協議会」が立ち上がった。モスクワなどの交通渋滞や老朽化する上下水道、ゴミ処理といった都市インフラを丸ごと売り込む。

 日露間の経済連携が進む中、遅々として進まない極東開発に日本の協力を求める。エネルギー分野では、伊藤忠商事などが官民一体で進めるウラジオストクの大規模液化天然ガス(LNG)プラント計画が進む。丸紅も6月、国営石油最大手ロスネフチが計画する極東LNGからの輸入契約を結んだ。ロスネフチには三井物産も接近。10月にマガダン沖の石油探鉱を含め大陸棚と東シベリアの石油・天然ガス開発協力で覚書を交わし、極東ナホトカ地区の大型石油コンビナート計画の企業化調査でも合意した。

 この石油コンビナートは、企業連合で取り組む大型の国家プロジェクトになる可能性も秘める。三井物産モスクワの目黒祐志社長は「極東の雇用創出や産業高度化に貢献できる」と意義を強調する。人口減少に歯止めがかからない極東で化学や肥料などの産業が育てば、エネルギーに頼るロシアの産業構造改革にもつながるからだ。

「アジア開拓急務」

 新しい動きも出てきた。医療では社会医療法人の北斗が5月、ウラジオストクに遠隔医療などができる画像診断センターをオープンした。日本から磁気共鳴画像装置(MRI)などの検査装置を持ち込み、がんなどの早期発見に取り組む。農業では北海道銀行が音頭を取り、寒冷地農業技術を売り込む。アムール州で大豆やソバ栽培のプロジェクトを道内の農業関連企業と進めている。

 「ロシア側の期待感は大きいが、ガスと電力の売り込みは課題も多い」。10月初旬に外務省で開かれた「ロシア経済近代化に関する日ロ経済諮問会議」に参加した大手商社幹部はこう嘆く。

 同会議でロシア代表を務めたドボルコビッチ副首相は日本に積極投資を呼びかけたが「そう簡単ではない」という。サハリンの大規模発電所から北海道経由で送電網を引く構想はあるが、海外からの電力調達には電気事業法をはじめ国内法改正議論も必要になってくるからだ。

 日本に秋波を送る背景にはロシア側の危機感がある。これまで歳入の大半をエネルギーで稼いできたが、米国のシェールガス革命の余波で環境が一変。得意の欧州市場を中東カタールに奪われるなど惨憺(さんたん)たる状況で、「アジア市場開拓が急務になっている」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)。

 ロシアの思惑に応え官邸主導で発足した官民連絡会議。政府は、来年半ば以降に予定されるプーチン大統領の訪日など外交日程をにらみつつ、初会合のタイミングを計るが、具体的成果に結びつけられるかが鍵を握る。(上原すみ子)

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