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TPP、たばこ規制で論戦 新興国に米軟化も メキシコが「待った」
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シンガポールで開かれている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合で、たばこ規制の扱いが揺れている。米国は海外に事業展開するたばこ企業を保護するため、外国政府の急な規制変更に対抗できる手段の導入を主張。これに対し、新興国やオーストラリアは規制を各国が自由に変更できるよう導入に反対してきた。年内妥結を急ぐ米国は譲歩を示すが、メキシコも論戦に参加し協議が難航している。
米国が導入を提案するのは、「投資家と国家の紛争解決(ISDS)条項」。企業が外国政府の急な制度変更で不利益を被った場合に、国際紛争機関に提訴し、損害賠償を求めることができる仕組みだ。
米国は投資家保護を理由に、TPPの投資分野でも導入を推進しているが、米企業の巨額賠償請求を恐れる新興国やオーストラリアが反発。なかでも「たばこの扱いを巡り激しい駆け引きが行われている」(交渉関係者)。
背景には「マールボロ」などの銘柄を展開する米フィリップモリス社が過去にISDS条項を使い、オーストラリア政府に対して巨額賠償を求めたことがある。
オーストラリアは2012年に国民の健康被害を防ぐため、たばこの包装にロゴマークを使えないように規制。フィリップモリスは規制で商標権が奪われたとして、数十億ドルの損害賠償を求めたとされる。
TPP交渉で投資分野の議論は「ISDS条項の扱いを残して、ほぼ収束した」(同)。このため妥結を急ぐ米国は新興国の意見や健康重視の姿勢をアピールするため、たばこをISDSの適用除外とする譲歩案を提示。
9月に発足したオーストラリアの新政権はISDSを容認する姿勢に転換しているとみられ、たばこ除外で議論が終結に向かうとみられていた。
ただ、この提案にはメキシコが難色を示す。たばこが適用除外になれば主要輸出品目のお酒、テキーラも健康被害を理由にISDSの対象から外れ、外国の規制に対抗できなくなると恐れているためだ。
TPPは妥結すれば、「通商ルールの新たな基準となる」(通商筋)。協定におけるたばこの扱いが、各国の規制に影響を与える可能性も大きく、ギリギリの交渉が続いている。(シンガポール 坂本一之、会田聡)