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【アジアの目】シンガポール、外国人受け入れに限界 人口の26%占める

ニュースカテゴリ:政策・市況の海外情勢

【アジアの目】シンガポール、外国人受け入れに限界 人口の26%占める

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 シンガポールが正念場を迎えている。かつては東南アジア随一の経済成長を遂げて周辺国からは羨望(せんぼう)の的だったが、ここにきて経済は低迷。さらに8日には街のど真ん中で1969年以来、44年ぶりという暴動が発生した。リー・シェンロン首相もさぞ頭が痛いだろう。

 高まる国民の不満

 先日、シンガポールの繁華街、リトル・インディアで起きたインド系やバングラデシュ系の外国人労働者による暴動は、シンガポール政府が進めてきた外国人受け入れ政策が限界に達していることを示した。

 今回の暴動は、シンガポール警察の発表では、酔ったインド人労働者が作業員宿舎の送迎用バスから降ろされた直後に、そのバスの後輪に巻き込まれた事故がきっかけだ。11日の発表によると、暴動罪で10日にインド人24人を起訴したのに続き、11日にも3人のインド人を起訴。さらに捜査を進めるという。

 リトル・インディアは、シンガポールの大統領官邸や首相府の東側で、真新しいショッピングモールが相次いで開店する人気の観光地だ。

 リー首相は9日、即座にフェイスブックを通じ、今回の暴動が外国人労働者に対する差別などにつながらないよう訴え、平静を呼びかけた。急いだのは現場が首相府のそばだったからだけではない。シンガポール国民の間で外国人労働者政策に対する不満が高かったからだ。

 同国の外国人労働者数は、90年には全人口約301万人のうち10%程度だったが、政府は経済成長に伴う労働力不足を補うために外国人の受け入れ枠を拡大。2010年には全人口約507万人のうちの約26%、130万人になった。4人に1人が外国人労働者なのだ。

 このうち低賃金で働く外国人は約100万人に上る。シンガポールの民間非営利団体(NPO)で、外国人労働者の待遇改善を求める慈善団体「TWC2」によると、そのほとんどがインド、バングラデシュ、中国、フィリピン、インドネシアからの労働者だ。彼らは主に道路や高層ビルなどの建設現場や、下水掃除など公衆衛生といった危険で汚い低賃金の、シンガポール人がやりたがらない仕事に就いている。

 仲介業者が問題に

 以前、カジノで有名となった大型ホテルの建設現場を取材したことがあるが、気候の安定しているシンガポールでは通常、24時間工事で建設作業員は交代で働く。この現場には作業員宿舎や大食堂も完備されていたが、多くの作業員は、人材紹介業者が用意した宿舎と現場の間をバスやトラックで往復する。

 悪質な業者にかかると、作業員が給料をピンハネされ、労働許可証を更新するためと言われ、多額の手数料を取られたケースもある。十数人が集合住宅の1つの部屋に押し込まれ、たこ部屋生活を強いられたことを以前、地元紙ストレーツタイムズが大きく報じたこともある。

 しかし、今回の暴動を受けてシンガポール人の間では、外国人労働者に対する同情よりも、シンガポール政府が進めてきた外国人労働者受け入れに関する政策への批判の方が強い。

 政府が運営する意見サイトREACHのブログでも「(与党の)人民行動党(PAP)は、数千人の外国人が来てもなお、シンガポールは調和がとれ、安全な国といえるのか」といった声や「シンガポール人はもはや自国のなかで少数派だ。政府の失政のために、生活費の高騰と給料の減少、低賃金の外国人労働者からの圧力にさらされている」などの意見が目立つ。

 ただ、外国人移民や労働者を受け入れ、国力の増大を図るというのは、リー・クアンユー元首相が推してきた政策だけに見直しは容易ではないだろう。息子のリー・シェンロン首相にとっては、なおさらだろう。(編集委員 宮野弘之)

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