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英雄?悪玉?竹中氏に再び脚光 戦略特区メンバーの有力候補浮上
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国家戦略特区施行後の実施手続き 地域を限定して規制を緩和する国家戦略特区法案が、臨時国会で成立した。国内外から人材や投資を呼び込み、経済成長につなげる安倍晋三首相肝いりの政策で、基本方針は首相が議長を務める諮問会議で定める。そこに入る民間メンバーの有力候補に浮上しているのが元総務相で慶応大学教授の竹中平蔵氏だ。
特区推進派の筆頭格だからだが、野党には大企業優先の市場主義者のレッテルを貼られ、小泉純一郎内閣での郵政民営化のしこりから与党内にも煙たがる議員がいるだけに、波紋を呼びそうだ。再び政治の表舞台でスポットライトを浴びる竹中氏は、ヒーロー(英雄)か、それともヒール(悪玉)か。
特区には全国で3~5カ所程度が選ばれる見通し。東京や大阪など大都市が候補になるとみられる。特区のあり方に意見を出して、基本方針の中身を議論するのは経済再生担当相や総務相、規制改革担当相ら閣僚と5人の民間議員で構成する「国家戦略特別区域諮問会議」だ。メンバーになれば竹中氏は、まさに戦略特区の知恵袋のポジションに張り付く形になる。
だが永田町の竹中氏への風あたりは強い。
「竹中氏に入ってもらおうと思っている」。甘利明経済再生担当相が11月23日の都内で講演で、メンバー入りをぽろりともらしたところ、同月26日の参院内閣委員会で早速、日本共産党が反発した。「規制緩和で利益を得る業界の人物を、特区を作成する会議の真ん中に入れるべきではない」(山下芳生議員)と指摘。竹中氏が人材派遣大手・パソナの会長を務めていることをあげ、業界団体を代弁者を指すように批判した。
そもそも特区法案の大きな焦点は、雇用の規制緩和に踏み込めるかどうかだった。共産だけでなく、労働組合との関係が深い社民や民主にも警戒感がにじむ。
現在の安倍政権で、雇用の規制緩和の議論が注目されたのは3月15日の産業競争力会議。経済同友会の代表幹事の長谷川閑(やす)史(ちか)氏(武田薬品社長)が提出した「人材力強化・雇用制度改革について」を題した資料が火を付けた。
「大企業が人材を抱え込み、『人材の過剰在庫』が顕在化している」と指摘。人材の流動化を促す「重点施策」として、労働契約法での「解雇手続きの明確化」をあげた。
日本では、深刻な経営危機に陥った会社には解雇が認められるが、明確なルールは存在しない。解雇する場合、企業は民事裁判の過去の判例を参考にして違法性を問われないように手続きが進めるのが一般的だ。
戦略特区法案の審議では、提言の実現が検討されたが「解雇特区を作るのか」(民主党の海江田万里代表)と猛烈な反発を招いたうえ、肝心の厚生労働省が及び腰だったために、事実上、骨抜きに。解雇ができた事例集のようなガイドライン作成をするのにとどまった。
消化不良になった提言だが、いまの雇用制度に不満を抱く経済界の本音を浮き彫りにしている。
雇用制度について、竹中氏はどう考えているのか-。
「労働移動型の解雇ルールへのシフトは大変重要。判例に委ねられているのは、ルールとして不明確である。明文化すべきだ」。産業競争力会議の議事要旨によると、こう明言している。
しかし竹中氏は「解雇の自由化」を求めているわけではない。
訴訟を恐れる企業はリストラが進められず、訴訟を恐れない企業が安易な解雇をしていると問題視。ルールがはっきりしていないことで、むしろ労働者の権利を守られていないというのが持論だ。
それだけではない。能力の低い経営者が社長に居座れないような制度作りを提言。社長を解任できる独立取締役の重要性を常々、訴えている。
産業競争力会議続き、戦略特区諮問会議のメンバーにも竹中氏が入れば、さらなる雇用制度改革の可能性を捨てきっていない安倍政権の姿勢を示すことになる。
小泉純一郎内閣では不良債権処理や郵政民営化といった難題を任され、賛否両論の渦中にさらされた竹中氏。政策の実現にこぎつけたのは、閣僚だったからこそ。いまは民間有識者に過ぎない竹中氏の意見をどこまでくみ取るかは、安倍晋三首相の決断次第だ。