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海外情勢
高齢者用家電、進出にメーカー足踏み 需要増加も小規模市場に懸念
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高齢化が急速に進む中国で、高齢者向け家電の開発が求められている 世界でも最も多くの高齢者を抱える中国。今年はその数が2億人を突破する見込みで、2025年には3億人、34年には4億人に到達する見通しという。
関連産業からすれば、この巨大市場は発展の新チャンスだが、家電市場に絞ってみると、高齢者側の需要とメーカー側の意向との間に大きな隔たりがあるようだ。
家電売り場のテレビコーナーを見てみると、主流は大型のインテリジェンステレビとなっており、各メーカーとも多機能化を実現。無線LANによるネットワーク接続もできる。
しかし、パソコン操作になじみのない高齢者にとっては、どれも扱いづらい機能だ。実際、ある高齢者は「ただテレビ番組が視聴でき、音量調節さえできれば十分。それ以上の機能は混乱するだけ」と話している。
◆多機能化に煩わしさ
洗濯機に関しても、カシミヤやシルク専用の洗浄ボタンといった多機能化に煩わしさを感じる高齢者は多い。
斜め型ドラム式洗濯機は、腰への負担が小さいため、高齢者には適したデザインだが、通常の洗濯機の2倍近い5000元(約8万5750円)以上という価格設定のため、受け入れがたい商品となっている現実がある。
こうした現状下、高齢者向けの商品開発が進む唯一の分野といえるのが携帯電話だ。画面や文字、キーのサイズに加え、音量も大きく設定されており、ワンプッシュで家族や警察への連絡を可能にする機能も搭載。その他の追加機能はほとんどなく、価格も数百元と安価に設定されている。
しかし、現在市場に出回っている高齢者向け携帯電話の多くは、小規模メーカーから発売されたもので、サムスンやモトローラ、ノキアといった大手は売り出していないという。
オートメーション化が進み、機能が充実すればするほど、高齢者から遠ざかってしまうハイテク家電。その代表例であるテレビでは、リモコンにずらりと並ぶ小さなボタンへの抵抗感が強く、押し間違えても対応できず、子供に電話するか直接電源を抜いてしまう人がほとんどという。
中国家電協会がコンサルティング会社、奥維諮詢に委託した「中国高齢者家電需要調査研究報告」では、生活水準の向上や固定観念の変化にともない、中国の高齢者が家電購入にお金を惜しまなくなっていることが分かった。しかし、同時に自分に合った家電購入の難しさに悩んでいるとの実態も明らかになっった。また、将来的には中国で毎年600億元規模の高齢者向け家電需要が生まれるとの予測が示されている。
にもかかわらず、高齢者向けの専用商品を開発することについて、多くのメーカーは二の足を踏んでいる。
◆大手、携帯に参入せず
あるテレビメーカーの関係者は「通常のテレビに比べれば、高齢者向けの市場は小さく、価格を抑えることは難しい。しかし、高齢者は価格に敏感であり、この矛盾が開発を躊躇(ちゅうちょ)させている」として、携帯電話でも大手が参入していない理由はここにあると解説する。
生産規模の大きさから利益を確保している国内メーカーにとって、小規模市場向けの商品開発は慎重にならざるをえない。しかし、高齢化が加速する中国で、今後どれほどの勢いで高齢者向け家電市場が発展していくのかについては、多くのメーカーが「研究する価値がある」との見解を示している。(北京青年報=中国新聞社)