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ジェトロ 2014年のBRICS経済を占う ブラジル

ニュースカテゴリ:政策・市況の海外情勢

ジェトロ 2014年のBRICS経済を占う ブラジル

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 当初は緩やかな回復が期待された2013年のBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)経済は、米金融緩和の縮小観測による投資マネーの引き上げなどで、踊り場が続いた。米国や日本の景気回復見通しの中、日本貿易振興機構(ジェトロ)の各国事務所に14年のBRICS経済を占ってもらった。

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 ■景気立ち直りの鍵握る製造業

 ルセフ政権後半戦の最初の年となった2013年、ブラジル経済は立ち直れないまま次の年を迎えようとしている。本来であれば、14年6月に開催されるサッカー・ワールドカップの勢いで経済も飛躍するシナリオだったのかもしれないが、今月3日に発表された同年第3四半期のGDP発表では、前期比0.5%減という市場の予想を下回る結果となり、「リーマン・ショック直後並みの停滞ぶり」と市場から落胆の声が聞こえる。

 そのような中で、14年10月には大統領選挙がある。就任以降の経済低迷ぶりを見ると、ルセフ大統領の再選もおぼつかないと見るのが一般的である。ところが、世論調査では同大統領の再選は濃厚で、争点は決選投票まで持ち込まれることなく勝利できるかといった点になりつつある。野党候補も伸び悩み、現政権への攻撃も鈍っている。

 13年6月のサッカー・コンフェデレーションズカップの期間中には、ブラジル全土で100万人を超える市民が街頭に繰り出し、改善の兆しを見せない公的医療や教育などのソフトインフラへの投資を訴え、慢性的な政治汚職の追放を願った。ただし、与野党互いに脛(すね)に傷を持つ中で、大統領選の争点になりにくいのが実情だ。実際に、最近も与野党問わず、政治家による汚職の記事が紙面に踊る。

 人口2億人を超えた市場がブラジルの魅力であり、そのことはサッカー・ワールドカップや16年のリオデジャネイロ五輪が終わっても変わることはない。人口ボーナスは2020年代も続くというのが通説だ。ただし、民間企業にとってブラジルが投資したい国なのかという設問に対して、最近は冷ややかな見方が増えている。現地進出日系企業へのヒアリング調査を通じて垣間見えるのは、ブラジルの諸制度が頻繁かつ複雑に変わることで、成功へのビジネスモデルが描き難く、1~2年先までに見通すことも難しいと述べる経営者が増えていることだ。民間投資がこれからのブラジルの経済成長のカギであり、ブラジル政府関係者からも日本企業の投資に高い期待が集まるが、同床異夢のような状況に陥っている。

 14年に向けて、製造業がブラジル経済立ち直りの牽引(けんいん)役になることは衆目一致するところである。政府は13年4月から自動車新政策を導入したが、内製化の強化など保護主義的な色彩が濃い。高い税金や、人件費など構造的なコスト増による国際競争力の低下を前に、産業界では抜本的な改革を望む声が聞こえてくる。ルセフ政権の任期最後の年が始まろうとしている。(ジェトロ・サンパウロ事務所 紀井寿雄)

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