SankeiBiz for mobile

【海外進出支援の現場から】三国間貿易への物流取り組み事例

ニュースカテゴリ:政策・市況の海外情勢

【海外進出支援の現場から】三国間貿易への物流取り組み事例

更新

萩原輝彦・みずほ銀行直投支援部調査役  □萩原輝彦・みずほ銀行直投支援部調査役

 【問題】

 生活雑貨品の製造卸を行っているA社は、東南アジア諸国連合(ASEAN)のX国で生産委託を行い、製品を輸入している。国内物流センターで流通加工(検品・タグ付け・個包装)を行った後、販売先B社の指定倉庫へ納品している。

 納品後の流通経路を尋ねてみると、国内店舗向けと海外向け輸出の2パターンあることが分かった。国内シェアは堅実に伸びているが、海外向け輸出は、海外の競合他社に市場シェアを奪われており、取扱量が年々減っている。他社小売価格が非常に安価であり、抜本的なコスト低減を行い販売競争力を強化する必要があると認識している。

 【対策】

 まず、海外向け輸出製品のモノの流れをみると「生産国→日本(A社物流センター→B社指定倉庫)→販売国」となっている。物流コスト低減を考えるのであれば、単純な発想として生産国から販売国へモノを直送することが思い浮かぶ。

 では、直送できない要因には何があるのか。本事例では(1)製品品質への信頼性が十分ではない(2)流通加工を行う必要がある(3)売買契約上の制約がある-という3つの点に着目した。

 (1)については、従来一定の割合で不良品が含まれていたが、現地拠点がないため、品質管理スタッフが出張で出荷前検品を行うしか手立てがなかった。それでも、全ての商品を対象に現物確認ができず、やむなく日本で検品を行っていたようだ。今回、モノを直送するという前提で検討したところ、生産国に品質管理を行う拠点として、駐在員事務所か現地法人設立を検討することになった。今後は、OEM(相手先ブランドによる生産)工場内に常駐する形で品質管理スタッフを配置することになるという。

 次に(2)だが、店舗販売するために下げ札・ブランドネームなどのタグ付けを行う必要があり、日本で作業を行っていた。OEM工場に任せてしまうと、ブランドネームを複製され、商品が横流しされるリスクがあると考えたためだ。ただ、日本で流通加工業者へ相談した結果、生産国にも同じ機能を持った現地法人があることが分かり、ここに委託することになった。

 (3)に関しては、OEM工場との売買契約に最低発注数量(MOQ:Minimum Order Quantity)に関する規定があった。最低発注数量(例えば100)を船積み1回で輸送するという内容だ。

 従来は、全量日本向けに船積みしており、最低発注数量を上回っていればよかったが、販売国各国へ直送する場合、向け先によって船積み数量が100を下回るケースが想定される。そのため、本事例では貿易条件をFOB(本船積込渡し)からFCA(運送人渡し)に変更し、生産国の指定場所搬入時点で、受渡しを完了する形にした。OEM先の手間は増えることなく、契約条件の変更に応じることとなった。

 上述の3つの問題点がクリアできる見通しとなり、今後は三国間貿易の実務調整(決済方法の確認や船積書類の受渡しなど)を進めていくことになりそうだ。

 販売先B社にとっても、従来負担していた倉庫関連費用や輸送費用の削減につながり、競合他社に負けない価格での販売が期待できる。

 また、生産国と複数の販売国の間にFTA(自由貿易協定)/EPA(経済連携協定)が発効しており、販売国側で発生する輸入関税が最大30%削減できる見通しだ。(従来はFTA/EPAが定める直送条件を満たしていなかったため、FTA/EPA特恵関税が適用されなかった)

 【焦点】

 物流事業者は、荷主企業の多様化するニーズに応えるべく、幅広い提案を行う企業が増加。複合一貫輸送への対応に加え、流通加工や在庫買取などを組み合わせた提案も見られる。

 また、本事例では、販売先B社が輸出を行っていることが物流見直しのキーとなった。サプライチェーンの流れを把握し、経験豊富な物流事業者に相談することにより、新たな発見があるかもしれない。

 編集協力=みずほ銀行

                   ◇

【プロフィル】萩原輝彦

 はぎわら・てるひこ 2002年より6年間、中国上海にて日系物流会社勤務。08年よりみずほ銀行にて海外進出企業への国際物流支援業務に従事

ランキング